『北北西に進路を取れ』 (1959) アルフレッド・ヒッチコック監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



ヒッチコックはイギリスで活動していたが、ハリウッドに注目され、渡米後最初の作品『レベッカ』でアカデミー作品賞を受賞したのが1940年だった。その後、コンスタントに作品を発表するが彼のプライム・タイムは、1954年に『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』を立て続けに発表した以降の1950年代だろう。この作品は『めまい』('58)と『サイコ』('60)に挟まれた、まさに彼のピークの作品である。そしてその後の『鳥』('63)以降、急速に勢いを失っていく。

この作品は、ヒッチコックお得意の巻き込まれ型サスペンス映画の名作。ニューヨークの広告会社で重役を務めるロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)は、偶然同じ場所に居合わせてしまったためにキャプランという政府のスパイに間違えられ、謎の組織から追われる羽目に。ソーンヒルは追われながらも真相を探るべくニューヨークからシカゴ、サウスダコタのラシュモア山まで息もつかせぬ逃走劇を展開する。

荒野で飛行機に追われたり、四人の大統領の彫像のあるラシュモア山での格闘など印象的なシーンが多い映画。サスペンス映画ではあるが、現代的な目で観るとサスペンス的な要素よりはラブ・ロマンスの要素の方が印象的。そのいずれにおいても重要な役割をヒロインのイヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)が担っている。

全体のイメージはやわな007という印象の映画だが、007第一作の『007 ドクター・ノオ』は1962年の作品なので、この作品の後になる。

ラストシーンの列車がトンネルに入るシーンに関しヒッチコックは、「自分が作った一番エロチックなシーン。列車は男根のイメージである」というジョークを言った。

ちなみに、北北西は英語で"north-northwest"であり、"north by northwest"という方位は存在しない。北と西(4方位)の間の北西(8方位)と北の間が北北西(16方位)。英語には32方位の言い方が存在し、それは"by"を使うが、その後は必ずnorth, south, east, westが続く。北と北北西の間は"north by west"(「北よりも11.25°西寄り」)、北北西と北西の間は"northwest by north"(「北西より11.25°北寄り」)となる(北から、N、NbW、NNW、NWbN、NW、NWbW、WNW、WbN、W)。

勿論、現代の作品の方が深みがあり、面白いことは間違いないのだが、それでも時間を経ても色あせない魅力というものがクラシック名作にはある。ヒッチコックのピーク時の一連の作品にはそうした魅力があると感じる。ヒッチコック入門にはもってこいの作品がこれではないだろうか。

★★★★★★ (6/10)

『北北西に進路を取れ』予告編