『家族はつらいよ』 (2016) 山田洋次監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



『男はつらいよ』シリーズで有名な山田洋次監督。これまで彼の作品はことごとくスルーして、唯一観たのは松たか子、黒木華出演の『小さいおうち』のみ(この映画を観たおかげで、「くろきはる」と黒木華の名前を正しく読める)。あの『幸福の黄色いハンカチ』もアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『たそがれ清兵衛』も観ていない。

この作品のキャストが、山田監督による小津安二郎監督の名作『東京物語』のリメイク『東京家族』(これも未見だが)と全く同じことから、『東京家族』を作った時に、全く同じ家族構成でコメディを作ったらという構想が生まれたのだろう。ちなみに、この映画の中でも主役の平田周造役の橋爪功がDVDで観ているのは『東京物語』。小津へのリスペクトが伺える。

結婚50年を目前に控えた平田夫妻。夫はもうすぐ誕生日を迎える妻にプレゼントを贈ろうと欲しいものを尋ねるが、その答えはなんと「離婚届」だった。突如として持ち上がった離婚話に、彼らの子どもたちは大慌て。すぐに家族会議が開かれることになるが、それぞれが抱えてきた不満が噴出してしまう。

そつない作り。『男はつらいよ』を長らく愛してきた年齢層にはツボにはまるコメディであろう。観客のほぼ100%が孫がいるであろう年代の人達だった。そして彼らは大笑いしていた。

ただ、三世代が一つ屋根の下に住み、『サザエさん』の波平を思わせる家長が幅を利かせているという設定はいかにも昭和な感じ。

それぞれが小さな悩みを抱えているのだが、傍目には、仲のいい家族がお互いに他愛のない文句を言いあっているという、幸せ感一杯なのにそれでも不満を言っているようで、人によってはイラッとすることもあるかもという感じ。もっと現代的な家族はドライで、無関心であるがゆえにバランスが取れているように感じる。

山田洋次監督が好きという人以外は、観ても仕方がない作品。そうでない人の正しい鑑賞動機は、親を連れて鑑賞するのにいい作品はないかというニーズがある人であろう(自分がまさにそうであったのだが)。

★★★ (3/10)
『家族はつらいよ』予告編