『FOUJITA』 (2015) 小栗康平監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~




小栗康平監督は、1981年の監督作品『泥の河』で原作宮本輝の世界観を見事に映し出しており印象はよかったが、この作品は頂けない。

前半は、エコール・ド・パリの旗手として画壇での地位を確立した後の藤田嗣治を描き、後半は、日本に帰国後、田舎に疎開し軍部のために戦意高揚画を描く彼を描いている。

前半では、既に成功した時点から描き始めているため、ドラマが少なくメリハリがない。彼がいかにして裸婦像で「乳白色の肌」という独自な世界を作っていったかという画家としての成長過程の展開があった方がドラマチックだったと感じる。そして前半部分の最後の「フジタ・ナイト」と称するパーティーの様子が、あまりに作り物っぽ過ぎる。

後半に至っては、「だから何なの?」という描写が多過ぎる。映画は、作品のテーマや内容に関して観客が理解できることを前提する必要はなく、観客の感性に委ねる、監督と同じ答えを共有する必要はないということでも全然構わないが、それにしてもこれはないだろうというのがこの映画を観ての印象。

唯一よかったのは、エンディングでランスのフジタ・チャペルのフレスコ画をじっくりと見せてくれたこと。一度訪れたことがあるが、拝観ができる日ではなかったため外観しか見れなかったから。ただこれすらストーリーとは全く関係ない映像。藤田嗣治のファンしか観ないだろうが、がっかりすること請け合い。

★★★ (3/10)


『FOUJITA』予告編