『ベン・ハー』 (1959) ウィリアム・ワイラー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



アカデミー賞11部門受賞の史上最多部門受賞作品の一つ(同数受賞のその他の作品は1997年の『タイタニック』と2003年の『『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)。

子供の頃観た記憶は、戦車レースのシーンの迫力。それ以外はすっかり忘れていて、この映画のメインテーマがユダヤ人とローマ帝国の軋轢であり、イエス・キリストが起こした奇跡であることはすっかり忘れていた。

戦車レースのシーンは、久々に観てもエキサイティング。CGのない時代に、どうやってあれだけのスケール感のあるセットを作ったのか不思議。特に、騎手が落馬して後続の馬に踏まれるシーンは、人であるわけはないはずだが、リアルで迫力満点。

戦車レース以外のシーンで覚えていたのは、ジュダ=ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)の母と妹が投獄され、3年もの間放置された後、ベン・ハーの幼馴染でありながら宿敵のローマ軍人メッサラーの使いの者が訪れて、彼女たちがハンセン病に侵されていることを発見するシーン。あまりに苛酷な仕打ちとハンセン病に対する恐怖はいやでも記憶に残っていた。

この作品を再び観て、そのスケール感は時代を越えて楽しめるものだと言えるが、問題はハンセン病の扱い。映画作成は1959年であり、それに先立つ1940年代には、ハンセン病の感染力は極めて弱いと分かっており、治療法も確立していて、ハンセン病は既に治る病気となっていた。

今回はNHK BSの放映でこの作品を鑑賞し、字幕は「死病」となっていたが、ハンセン病であることは明らかであり、過去の誤った隔離処置の歴史を考えると、残念ながらこの歴史的名作は、ハンセン病に対する誤った印象を与えるのではないだろうか。そこまで考えると世知辛いかもしれないが、そうした配慮が弱者に優しい社会を作る近代的思想と考える。1959年制作当時はそうした発想が欠けていたということだろう。

★★★★ (4/10)

『ベン・ハー』予告編