初対面の日に届いた「おやすみ」から、T君からの連絡は途絶えました。
電話も、私から掛けても出てもらえませんでした。
パケ死するほど毎日密に連絡を取り合っていたのは、まるで昨日の事のようで、もう二度と戻れない遠い過去になってしまったのです。それもこれも、私の容姿が悪いから・・・。
それでも私はT君への想いを断ち切る事ができずにいました。1年近くも強く深く思い続けてきた人を、将来を語った恋を、簡単に忘れられるわけがありませんでした。
私はT君からの決定的な決別を突き付けられない限りは、まだ終わりではないと勝手に思い込むようにしていたのです。時間が経てば、考え直したT君が戻ってくるかも知れない・・・そんな無謀な事も考えました。
初対面の1週間後、せめて映画に行く約束くらい果たしてもらおうと、前日の夜にメールをしました。
「明日、一緒に映画行くって約束、守ってくれるよね?
私の事が嫌いでも構わないから、一緒に来てほしいよ。
先の事とかは期待しないから、普通に友達として会ってほしい・・・」
メールに書いた通りの気持ちでした。
嫌われてもいい。
ただ、いなくなるのだけは嫌・・・。
T君を失えば、今の私には何も残らなくなる・・・。
でも、T君からの返事はありませんでした。
翌日、約束を守ってくれる事を心のどこかで期待していた私は、一方的にT君にメールを送って、勝手に待ち合わせの時間と場所を指定して待ちました。
指定した時間を30分過ぎ・・・1時間過ぎ・・・2時間過ぎ・・・3時間過ぎ・・・
日が暮れる頃に私はやっと諦めました。
T君からは、断りのメールもお詫びのメールも、何もありませんでした。
見事にスルーされてしまいました。
私は寂しさと悲しさのあまり感情的になって、T君に長いメールを送りました。
「どうして無視するの?私、4時間も待ってたんだよ・・・。
守れない約束なら始めからしないでよ・・・。
行けないなら一言言ってくれれば良かったのに。
それに、私の事をあれだけ愛してるって言ってくれたのは、
1年間のT君の言葉は全部嘘だったの?
私は信じてた。T君だけは信じられると思ったから。
顔の事で嫌いになったなら、正直にそう言ってくれればいいじゃん。
もう連絡取りたくないなら、ちゃんと言ってくれなきゃ分からないよ。
このままじゃ忘れる事もできないよ・・・」
無視されるのも、読まれないのも、覚悟の上でした。
もうこのメールを最後に諦めよう・・・そう思っていたら、T君からメールが届きました。
「色々と事情があって、これからはメールも電話も出来ません。
だからもうメールも電話もして来ないでください。
教えた住所や携帯の番号も削除してください。
お願いします」
このメールを読んでから、私は泣き崩れました。
「外見なんかで気持ちが変わる事は絶対に無い」??
T君が言ったあの言葉は一体何だったの!?
「俺は綾香の本当の価値を知ってる」??
そんなの結局嘘だったじゃない!!
私がブスだと知った途端に拒絶できるんだから!!
「住所や携帯の番号も削除してください」??
私が邪魔になったんだね?ブスは邪魔なだけなんだね?
顔を気にするなら始めから思わせぶりな事を言わないで!!!
もう二度と誰も信じない!!
そう憤ったものの、今の今まで好きだった人を、嫌いになんて・・・なれない・・・。
嫌いになれるならなりたいよ・・・。忘れて楽になりたいよ・・・。
でも、どうにもならないんだよ・・・!!
こんなに好きにさせたのに、そんなのって・・・あんまりだよ・・・。
悔しい気持ちと、現実を受け入れたくない気持ちから、私は最後の悪足掻きをしました。みっともない程に。
私はメールを読んだ直後に電話を掛けましたが当然出てもらえず、T君が泊まっているホテルへ行って、受付の人に緊急だと伝えて取り次いでもらうよう頼み、T君をフロントに呼び出しました。T君は部屋着のまま、険しい顔で出てきました。ホテルのフロントでは場所が悪いので、ホテルの脇の駐車場で話しました。
「・・・何ですか?」
「酷いよ!!あんまりだよ!!」
「だから何なんですか・・・」
「私・・・どうすればいいの?!
T君、私の事・・・好きじゃなかったの!?」
「・・・そういう感じです・・・」
「だったら何で!?何で好きって言ったの!?
軽い気持ちで言ってたの!?」
「そういう訳じゃないですけど・・・心変わりしたっていうか・・・」
「でも・・・それでもイイってメールに書いたじゃん!!
恋愛抜きで、友達としても無理なの!?」
「ごめんなさい、無理です・・・」
「酷いよ・・・!!」
「もうこれで終わりにしましょう。話してもきりがないから。
俺も明日帰らなきゃいけないし、これから忙しくなるから・・・」
これ以上は・・・もう何を言っても、泣き縋っても無駄なんだと感じました。
下を向いて何も言えず黙っていた私に「それじゃ、元気でね」とだけ言ってホテルに戻ってしまったT君。最後の後姿を見る勇気もなくて、見てしまえば立ち直れなくなるような気がして、私は彼の気配が完全に消えるまで下を向いていました。
こうして、この恋はあっけなく終焉を迎えました。