私の事を快く思っていない人が大勢いると知ってから、私は人の目を気にしないように心掛けました。私と話した事があって、それで文句を言ってる男なんて、私に無駄なお金を貢いだ馬鹿男なんだと思うようにしました。結局、チャトレに入れ込んで毎月何万も注ぎ込む男なんて、はなっから底辺の男だと。


実生活では女と話す機会もない、私のようにみすぼらしい人間なんだと・・・。



掲示板を閉鎖してから私は、「みすぼらしい男達からより多くの金を巻き上げてやろう」と思って、チャットでは精一杯のブリッコをして、馬鹿な男たちが話し掛けてくるのを待ちました。


なんだかんだ言っても男はブリッコした女が好きで、私がログインしてる間、客が絶える事はありませんでした。私の収入はついにひと月で70万を越えるようになり、多い時には90万近くも売上げました。あれだけ私の文句を言ってた男達を見返したような、清々しい気分でした。



その頃の私はもう、お金こそが人の価値を決めるものだと信じていました。才能も技術も努力も無い人はお金を稼げなくて、何かに秀でた人だけが大きなお金を手に入れるのだと考えていました。そう考えると、私を批判してた大勢の男達は大半が普通の会社員か何かで、明らかに私よりも低所得な人間。私の半分も稼げていない人間ばかり。そんな下らない人間の戯言で心を痛めていた自分を馬鹿らしく思いました。


そう、お金持ちは貧乏人とは住む世界が違う。

使う言葉が同じだけで、話を聞く必要なんか無い。

私は、私の事だけを考えて、稼いだお金で好き放題に生きればいい。

掲示板で自分がボロクソに言われてると知った私は、ものすごいショックを受け、しばらくチャットに入れませんでした。見なきゃいいのに一日に何度も自分のスレッドを見ました。私以外の女の子のスレッドは、

「○○ちゃん今日はいないね~寂しい」

「××ちゃん大好き!頑張って!」

女の子を応援するような優しいコメントばかりなのに、私の話題だけは私を批判するコメントしか出てきませんでした。


それでも自分の人気を信じてた私は(実際に売上はNo.1だったので)、しばらくチャットに入らなければ誰かが心配してスレッドに書き込むと思ってました。しかし、私の期待とは裏腹に、ついたコメントは酷いものでした。


「綾香ここ見てんじゃね?」

「ブスがバレて出てこれなくなったんじゃ?」

「そろそろ自分がどう思われてるか気付いたんじゃ?」

「自惚れてた自分を恥じてそのまま消えろ」


顔も見えない相手にここまで批判されて、やるせない気持ちになりました。悔しかったし、裏切られたような苦しい気持ち・・・。チャットでチヤホヤされてるように感じてたのは、私の自惚れに過ぎなかったんだ・・・。本当はみんな、こんな事を考えて私と話してたんだ・・・。


それでも、私はチャットを止めるわけには行きませんでした。チャットの収入が無くなれば私には働く場所もないし、こんな容姿で外に出るのはすごく怖い事で・・・。



文字だけのチャットで毎月何十万も稼げるんだから、どんなに男達に批判されても、嫌われても、それでも続けるしかないんだ・・・。私にとって、それが一番確実で安全で、楽な生き方なんだ・・・。


私は自分で作った不愉快な掲示板を削除して、チャットに復帰しました。

掲示板は始めこそ過疎気味だったものの、すぐに人が増えて、それなりに盛り上がってきました。掲示板開設から数日が経った頃、私は自分の話題を語るスレッドが出来た事に喜びました。


「売れっ子チャットレディー綾香」


確かそんなタイトルでした。本当は自分で最初に作ってしまおうとも思ったけど、純粋な知名度を知りたいというのもあって、あえて誰かがスレッドを作るのを待っていました。


私の評判はどうなんだろう。

一体どれほどの男達が私を求めてるんだろう。

きっと他のチャットレディーのスレッドより盛り上がるはず。

そこに私本人が書き込んだらどうなるだろう。

皆驚いて、ちょっとした騒ぎになるだろうか。


そんな事を考えながら、出来たばかりのスレッドを開いてみました。




綾香っていっつも服や小物の写真しか出してないけど、実際はブスなんじゃない?ブスっぽいオーラが漂ってる。ブスだから顔見せられないんだ。


綾香と話したけどつまらなかった。モテ自慢と不幸自慢がお得意。


綾香に入れ込んでるのはネットに疎い中年オヤジだけ。


綾香って一日中ログインしてるよ。暇なおばちゃんなんじゃない?




そこにあった書込みはどれも、私を中傷するものばかりでした。