Romantique No.608 架空美術展『世界のイラストレーション・アーカイヴⅣ』 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

                     Adieu Romantique No.608

                                         架空美術展

          『世界のイラストレーション・アーカイヴ Ⅳ』

                      

ずっと書いている「世界のイラストレーション・アーカイヴ」の4回目。今回は1960年代の中期頃からアメリカを中心に興ったムーヴメント、サイケデリック・カルチャー【Psychedelic Culture】の影響を受けてカラフルに耀いたイラストレーションを。


🎨サイケデリックなイラストレーション、と言えばやっぱりここからでしょう(イギリスだけどね)。ビートルズのメンバーとはハンブルグ時代からの友人のひとりであり、当時、ジャック・ブルースの後任としてマンフレッド・マンに参加、その後もベーシストとしてイラストレーターとして活躍したクラウス・フォアマン【Claus Voormann】(1938~)。1966年にリリースされたビートルズのオリジナル・アルバム『リボルバー』のカヴァーで最高のイラストレーションを描き、ビートルズのメンバーの写真を最高に魅力的にコラージュした。そうしてこのアルバムを境にして(前作『ラバーソウル』とを境にして)、ビートルズはサイケデリックの扉を大きく開くことに。
音譜アルバムのラストに置かれた、振り切ったサイケデリア『Tomorrow Never Knows』を。


🎨いつもビートルズの近くに居た彼が描くビートルズは、やっぱり他の人が描くビートルズとは違うんだと思わせてくれる。まぁ、ここでのジョージは誰だか分からないくらい似てないけど、そんなことはどーだっていいもぐもぐ

🎨ハンブルグ時代のビートルズを描いたイラストレーション。ジョンポールジョージの他、スチュワート・サトクリフピート・ベストが描かれている(もちろん。まだリンゴはいない)。それにしても。多分、ポールであろうと思われる人物はどう見てもモハメッド・アリにしか見えないけど(ここでのジョージは上手く描けてるよね)、そんなこともどうだっていいもぐもぐ
🎨コミック的に描かれたジョンとポール。いゃぁ、ほんと面白いイラストだよね。

🎨『E.T.』が流行っていた時に描かれたものだろうか?「EMI」という文字が左のカップでは微妙に「ET」と読めるように描かれている。


🎨ビートルズのアルバム・カヴァーなら当時のビートルズのベスト盤と言うべき、1966年リリースのオリジナル・アルバム『オールディーズ』も。イラストはデヴィッド・クリスチャン【David Christian】が描いた。
🎨彼の絵をもう1枚。これはまぁ、何てこともない絵だけど時代の感じは出てるよね。

🎨1968年のビートルズのアニメーション映画『イエロー・サブマリン』【Yellow Submarine】を手掛けたハインツ・エーデルマン【Heinz Edelmann】(1939~2009)。ドラッグ・カルチャーが生み出したサイケデリックなイメージとポップアートをMixtureしたような、あまりにも幻想的なヤバい世界であった。
 


音譜音楽は、アルバム『イエロー・サブマリン』から

ジョージが書いた壮大なサイケデリック・ワールド『It's All Too Much』を。


🎨ビートルズが1967年に立ち上げた(「アップル・レコード」を核とした)経営組織「Apple Corps Ltd.」の中のひとつであったショップ「アップル・ブティック」。そのデザインやイメージはオランダからやって来たグループ、ザ・フール【The Fool】が担当。サイケデリックなイラストレーションはメンバーの女性、マリーケ・コーガー【Marijke Koger】が描いた。


華々しくオープンしたアップル・ブティックではあったけれど、ちゃんとしたビジネスとして管理・運営されることなく、オープン間もなく店員は酔い潰れ、店のお金は持ち出され、商品は万引きされ放題という具合にメチャクチャになり、僅か半年ほどで閉鎖されてしまった(自由にやり過ぎ、かと)。

 

 🎨ザ・フールのメンバー。

🎨マリーケ・コーガンがアップル・ブティックの壁面に描いた作品。「Low Brow Art」の源流かなうーん
🎨因みに。彼らは1968年にグラハム・ナッシュのプロデュースでサイケデリック・フォークなアルバムもリリースしている。






🎨1962年に『カッコーの巣の上で』を書き、ベストセラー作家になったケン・キージー【Kenneth Kesey】(1935~2001)。彼と彼の陽気ないたずら者たち「メリー・プランクスターズ」【Merry Prankstersは、1964年に来たるべき時代を予見するようにサイケデリックなイラストレーションが描かれたTrip Bus 「FURTHUR号」アシッド・テストと称したLSDを全米に広めるツアーを行い、その後、1960年代初め頃から幻覚作用の研究を続けていたハーバード大学の教授、ティモシー・リアリー【Thimothy Leary】(1920~1996)と共に、ロック・ミュージシャンやヒッピーたちを巻き込んだサイケデリック・カルチャーの精神的な支柱となった。因みにTrip Busの運転手は、1950年代に誕生したビートニクを代表する、ジャック・ケルアックの小説『路上』の主人公のモデルとなったニール・キャサディだなんて。ほんと話が出来過ぎだよね(同じく。詩人でビートニクのアレン・ギンズバーグもサイケデリックに没頭していた)。

🎨1967年夏にサンフランシスコのヘイト・アシュベリー周辺に集まったヒッピーたち(フラワー・チルドレン)から生まれた一大ムーブメント「Summer of Love」の中で誕生した当時のNew Rockと歩調を合わすように、さまざまなサイケデリックなイラストレーションが生まれた。その動きを代表したウェス・ウィルソン【Wes Wilson】(1937~2020)の作品を。


🎨サイケデリックなイラストレーションは、何故かは分からないけど、19世紀末のアール・ヌーヴォーからの影響を強く受けている。

🎨このイラストは1969年にリリースされたサンタナのデビュー・アルバムのカヴァーに使われた。

音譜音楽はジェファーソン・エアプレインの、1967年の名盤『シュールリアリスティック・ピロー』から。とにかく大好きな曲『She Has Funny Cars』を。


🎨女性イラストレーター、ボニー・マクリーン【Bonnie Mclean】(1939~2020)の作品を。





🎨ヴィクター・モスコソ【Victor Moscoso】(1936~)のサイケデリックな作品を。




音譜フィル・メイを中心に1960年代前半より活動し(ローリング・ストーンズの初期のメンバーだった、ディック・テイラーが在籍していた)、1968年には世界で最初のロック・オペラと言われるアルバム『S.F.Sorrow』をリリースしたプリティ・シングスがビジネス的な面で活動した別バンド、エレクトリック・バナナ【Electric Banana】(とにかく名前がカッコいいよね)のコンピレーション・アルバム『even more electric banana』から『It'll Never Be Me』


🎨リック・グリフィン【Ric Griffin】(1944~1991)の、サイケデリックな作品を。



🎨彼はサンフランシスコのサイケデリック・バンド、ジェリー・ガルシア率いるグレイトフル・デッドのアルバム『アオクソモクソア』のカヴァーを描いている。
音譜そのアルバムのオープニング曲『St.Stephen』


🎨アルトン・ケリー【Alton Kelly】(1940~2008)もスカルをモチーフにしてグレイトフル・デッドのイメージを膨らませた。





🎨スタンリー・マウス【Stanley Mouse】(1940~)の作品を。70年代にはジャーニーのアルバムのカヴァーを手掛けている。



🎨マーティン・シャープ【Martin Sharp】(1942~2013)の作品とロックは切り離せない。


🎨マーティン・シャープはクリームの1967年のアルバム『カラフル・クリーム』のジャケも担当した。
🎨アルバムの裏面はビートルズの『SGT.ペパーズ~』みたいなコラージュに。

🎨ロバート・クラム【Robert Crumb】(1943~)はアメリカン・コミックの作家。ポップアート~サイケデリックの流れの中で、ジャニス・ジョプリンがボーカルを努めたビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのアルバム『チープ・スリル』のカヴァーに使われ、ロック史に刻まれることに。



🎨アメリカン・コミックの女性作家、ダイアン・ヌーミン【Diane Noomin】(1947~2022)の作品を。



🎨日本にはドラッグ・カルチャーが存在しなかったことを前置きして(つまり。日本ではサイケデリックではなく、サイケという、なんちゃってな言葉に置き換えられた)。1960年代前半に、もともとイラストレーターとして活躍しながら、赤瀬川源平篠原有司男荒川修作らが主宰した前衛芸術家集団「ネオ・ダダイズム・オーガナイザーズ」と行動を共にし、単身、アメリカに渡った後、現在まで数多くのサイケデリックなイラストレーションを描いた田名網敬一【Keiichi Tanaami】(1936~)の作品を。

🎨1960年代末に。サイケデリックなイラストレーターたちの作品をコンパイルした画集「Electrical Banana」の表紙を田名網敬一の作品が飾った。









🎨当時の人気女優でタレントでもあった、松岡きっこがレイアウトされたシリーズは、もともとグラフィック・デザイナーでありイラストレーターだった彼の資質がよく表れている。


🎨マティー・クラーワイン【Abdul Mati Klawein】(1932~2002)は、マイルス・デイヴィスの歴史的傑作アルバム『ビッチェズ・ブルー』のカヴァー・アートを描いた。

🎨さらに。サンタナの1970年リリースのセカンド・アルバム『天の守護神』のカヴァー・イラストにクラーワインが1961年に描いた『受胎告知』が使われた。




🎨フランスでのサイケデリックはバンド・デシネ【

bande dessinéeと呼ばれるフランス語圏のコミックで表現された。フィリップ・カザ【Philip Caza】(1941~)の1970年の代表作クリス・クール』【Kris Kool】を。



音譜マッシュルームなジャケと共に素敵な音楽を。1968年にリリースされた、カナダ産ソフト・ロック名盤。ミューチュアル・アンダースタンディング【The Mutual Understanding】のアルバム『in Wonderland』から。バーバーな洗練されたコーラスが魅力的な曲『Wonderland』


🎨同じくバンド・デシネの作家、ニコラス・デヴィル【Nicolas Devil】(1943~)の作品を。




🎨グイド・クレパックス【Guido Clepax】(1933~2003)。代表作『Valentine』を筆頭に、エマニュエル・アルサンの小説を題材にした『エマニュエル』ポーリーヌ・レアージュ『O嬢の物語』マルキ・ド・サド『ジュスティーヌ~美徳の不幸』など。サイケデリックじゃなく、官能的なエロティシズムがスタイリッシュに描かれた。




🎨あぁ~、ここにも(前回のブログで書いた)フラミンゴッズな「楽園」が…







音譜最後に。1972年にリリースされたカーリー・サイモンのアルバム『No Secrets』から。(今回のブログの最初に登場した)クラウス・フォアマンの渋いベースで始まる、(ミック・ジャガーがクレジットなしでバック・ボーカルを務めた)名曲『うつろな愛』で締め括ることにするね。


今回は日本のイラストレーションは田名網敬一の作品だけになってしまったケド。1960年代から1970年代にかけて日本のイラストレーションに面白いものがなかったかというと、まったくその逆。むしろその時期にこそ、日本のイラストレーションやグラフィック・デザインはアグレッシヴに大きく花開いたと言える。なので次回は、その時期の日本のものばかりをキュレートする予定。お楽しみに。

じゃぁ、また。
アデュー・ロマンティークニコ