Romantique No.587『珈琲 & 音楽 in 喫茶店 Ⅴ』 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

                 Adieu Romantique No.587

                   『珈琲 & 音楽 in 喫茶店 Ⅴ』

 

昭和の香りが濃厚に沈殿し、まるで時間が止まってしまったような喫茶店(扉には鈴が付いているようなお店。扉を開くとチリンチリンって)。窓際の席に座って珈琲を飲みながらそこで流れていて欲しいと思う、謂わばコーヒー・ミュージックとでも言えそうな音楽や(僕にとってそれは昭和の、日本のロックやフォーク、歌謡曲を指している)、その店で読んでいたい本とか、そこで眺めていたいようなアートや写真、その時代の映画やなんかについても適当に散りばめながら自由に綴っていくシリーズの(UPした記事をうっかり削除してしまった「幻のブログ」を挟んで)5回目

 

良くも悪くも、すべては僕のイメージの中に。喫茶店の窓側の席に座って、ひとり珈琲を飲みつつ流れてくる音楽を聴きながら。ボーッと妄想に耽けったり鞄の中から本を取り出してパラパラと頁を捲ったり。時折、窓の外に見える風景や窓の外を通り過ぎる人をぼんやり眺めて過ごす、そんなほっこりとした時間を。

 

僕のイメージの断片から、昭和の残像のような世界が立ち現れてきてくれればいいなって思う。

 

音譜ボブ・ディラン『Like A Rolling Stone』の影響を受けて音楽を始めたエンケンこと、遠藤賢司(1947~2017)の、1971年にリリースされたセカンド・アルバムから。フォーキー・パンクな(そんな言葉はないけどね)傑作タイトル曲『満足できるかな』。長いキャリアの中で数多くの曲を発表しながらも「エンケンに駄作なし」と言われたほどの、その才能が輝いている。

※このブログ・シリーズで一度PICK UPしたジャケは小さく扱うことにするね。


音譜この人の佇まいは昭和そのもの。山崎ハコが1976年にリリースしたセカンド・アルバム『綱渡り』から、『歌いたいの』。(個人的には)名曲だと思うな。

 


🖊️本を読む替わりに。喫茶店のテーブルに「点取占い」をいくつか並べてみた。昭和を感じながら時間を過ごすにはちょうどいいアイテム「点取占い」、「点取り様」。神のお告げか、天からのメッセージか。自分自身にはまったく自覚がなかったり、実は何となく気づいてはいるけど、どこか隠しておきたいような後ろめたい気持ちを戒めてくれる数々の言霊。その鋭い切れ味は、かの糸井重里のアルバイト説があったほど。因みに。今も販売されている「点取占い」は少々「あざとさ」が透けてしまっていて僕はあまり好きになれないえー?

※そう、そう。自分自身に向けて、ね。
 
※言うに言えないモヤモヤした、そんな気持ちがときどきあるよね。
 
 ※「野ウサギの走り」のように。中沢新一の本を読めば「なるほど」と思えてくるかも。
 
※結局。並べたものはすべて5点以下という結果に。
 

音譜音楽を。ケメこと佐藤公彦の、1974年の曲 『バイオリンのおけいこ』。1972年に『午後のふれあい』でデビュー。当時、よしだたくろうと共に音楽レーベル「ELEC」を代表したフォーク・シンガーであり、(たくろう以上に)女の子たちのハートをメロメロにしたフォーク界のアイドルでもあった。



☕昭和の雰囲気を漂わせたレトロな喫茶店じゃないけど。しかもコーヒーじゃなくチャイだし。僕が若い頃にアルバイトしていた、大阪の中津というところにある無国籍なチャイ・ショップ「カンテ・グランデ」トータス松本を始めウルフルズのメンバーがバイトしていたことでも有名な。一度、改装しているけど(僕は改装前の方が好きだったな)創業50年以上になるんじゃないだろうか。独特の空気感があって。とにかくこの店で過ごす温かな時間は格別。
 
☕イングリッシュ・ガーデンのように草花が溢れた細い階段を降りていくアプローチが魅力的。
 ☕天井が高くて開放的。なのに密度の濃い空気が流れている。
 
音譜流れてくる音楽は、このお店にぴったりな、細野晴臣の無国籍音楽。「エキゾチック3部作」の2作目、1976年のアルバム『泰安洋行』から『Sayonara , The Japanese Farewell Song』を。きっと「ここではない何処かへ」、或いは「今ではない、いつかへ」連れて行ってくれるはず。



音譜同じくエキゾチック3部作の最終作。YMO結成直前の1978年にハリー細野とイエロー・マジック・バンド名義でリリースされたアルバム『はらいそ』からタイトル曲を。因みにアルバム・アートは、(細野さんがYMOへのメンバーに引き入れようとしていた)横尾忠則
 


🎨そして日本を代表するアーティストのひとり、横尾忠則【Tadanori Yokoo】(1936~)の作品をいくつか。横尾さんの作品は全キャリアを通じて、技術がどうとかとはまったく関係なくって。とにかくその自由なイマージュやインスピレーションがいつもオーラのように横尾さん包み込んでいるようにも見える。

🎨コロナ禍には。自身の作品をCorona-Mixした。
 
 
 

 

🎨女優、浅丘ルリ子への横尾的偏愛、或いは妄想。

🎨女優、藤純子への横尾的偏愛、或いは妄想。

🎨男優、高倉健への横尾的偏愛、或いは妄想。

🎨写真家・細江英公三島由紀夫を撮った写真集『薔薇刑』のためのポスター。即ち。作家、三島由紀夫への横尾的偏愛、或いは妄想かと。

 

🎨「右に進む」か「左へ行く」か、「後戻りをする」かという選択の入口に立たされるような。そんな感じがする2000年代以降の傑作「Y字路」シリーズでは、横尾さんの子供時代の原風景のようなものが描かれている。

 
 
 
🎨そしてこれは横尾さんの、比較的最近の「幻郷」【GENKYO】シリーズ。

 
音譜久保田麻琴と夕焼け楽団の、アメリカの南部臭さ、(或いはニューオリンズ・ファンク)を極めた1979年の傑作アルバム『セカンドライン』から。後に久保田麻琴の奥様になるサンディーがボーカルを取った、カントリー&ウェスタン調の可愛い『Lover Please~Stop That Train』。ウェスタン・シャツとウェスタン・ブーツを履いたサンディーの可愛い姿が浮かんでくるよう。

📷️若かりし頃のサンディーのポートレイトを。
 

音譜「珈琲 & 音楽 in 喫茶店」では。やたらはっぴいえんどのことや、そのメンバーだった細野晴臣松本隆大瀧詠一のことを書いているけど、もうひとりのメンバー、鈴木茂のことも書かずにはいられない。日本を代表するファンキー・ギタリストのひとり。彼の音楽は時間が止まったような喫茶店で聴くより、オシャレな音楽バーで、聴く方が似合うかも。1975年のアルバム『Band Wagon』から『砂の女』『100ワットの恋人』

 



音譜はっぴいえんどのギタリストだった鈴木茂が1976年にリリースしたソロ・アルバム『Lagoon』のラストを飾った名曲『8分音符の詩』。因みに。この曲は1978年にライヴハウス「ロフト」でのLiveを集めたアルバム『ロフト・セッションズ』竹内まりやがデビューする前に竹内マリヤの名前で出演し、カヴァーしている。

 


音譜はっぴいえんど解散後に細野晴臣が中心になり鈴木茂林立夫松任谷正隆と結成したティン・パン・アレー(当初、一時的にキャラメル・ママとして活動した)の1975年のファースト・アルバムアルバム『キャラメル・ママ』から。YMO結成の伏線になった細野さんの曲「イエロー・マジック・カーニヴァル」と、ボーカルに南佳孝を迎えた、鈴木茂と松本隆によるロマンチックな名曲『ソバカスのある少女』を。
 



🎨1964年に原田維夫横尾忠則の3人でデザイン事務所「スタジオ・イルフィル」を結成し、本格的にキャリアをスタート。現在に至るまでイラストレーター、挿絵画家、グラフィックアーティストとして常に第一線で活躍し続ける宇野亜喜良(1934~)の作品を。それにしても。この人のスタイリッシュなセンスもそうだけど、月や星、ユニコーン、「不思議の国のアリス」を題材に取った「少女愛」に溢れる「可愛らしさ」はいったい…因みに、奥様は元女優の集三枝子
 
🎨化粧品マックス・ファクターのためのポスター。
 
 
🎨寺山修司が脚本を書き、羽仁進が1968年に撮った映画『初恋地獄篇』のためのポスター。
🎨寺山修司が主宰した演劇実験室「天井桟敷」の1968年の舞台『星の王子さま』のポスター。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

音譜ZUZUこと、安井かずみ【Kazumi Yasui】(1939~1994)。60年代から数多くのヒット曲を生み出した作詞家であり、自由に生きる女性を象徴したファッション・リーダーでもあった、そんな彼女の1970年のアルバム『ZUZU』から『わるいくせ』を。

 

音譜『ZUZU』に続く自身の2枚目のアルバム『空にいちばん近い悲しみ』は音楽ではなく朗読集だった。当時の彼女の佇まいがカッコいいのでアルバム・カヴァーもUPしておくね。

音譜シングル『空にいちばん近い悲しみ』のカヴァーには宇野亜喜良のイラストレーションが添えられた。

 📷️ファースト・アルバム『ZUZU』に使われた写真。

📷️ゲンスブールブリジット・バルドーも歌ったように。当時の女性たちは映画『俺たちに明日はない』ボニー&クライドに憧れ、クライド・パーカーフェイ・ダナウェイ)のスタイルを真似た。

📷️1975年に8歳下の加藤和彦と結婚。とても仲良しで、オシャレでセレブリティな夫婦生活を送った。

 
📖本を一冊。野地秩嘉が書いた1997年の本『キャンティ物語』。このお店も喫茶店じゃないけど昭和の香りがするので。安井かずみ加賀まりこ荒井由実も通った、有名人が集うサロンであった六本木の高級イタリアン・レストラン「キャンティ」。本物のセレブレティ、川添浩史が1960年に開業。妻の梶子と共に軽やかに(知らんけど)経営を続けた。このお店にはフランク・シナトラマーロン・ブランドロバート・キャパなど海外の有名人も数多く訪れた。常連のひとりだったかまやつひろし「ふと見ると隣の席では、フランク・シナトラやマーロン・ブランドやなんかが食事してる。僕ら若憎は震えながら挨拶し、いろんなことを教わった。それはあたかも、真夜中の学校のようだった」と献辞を贈っている。
音譜ザ・スパイダースのメンバーであり、この店の常連だったかまやつひろし(1939~2017)。のソロ・デビュー・アルバム『ムッシュー/かまやつひろしの世界』(1970)から。同じくキャンティの常連であったレーサー福澤幸雄(当時、歌手・小川知子と交際していた)が1969年にテスト走行中の事故で亡くなってしまった際にかまやつが捧げたレクイエム『ソー・ロング・サチオ 』
 

 
音譜加藤和彦の1978年のアルバム『ガーディニア』から。ジャズ・シンガー、笠井紀美子とデュエットしたタイトル曲を。


音譜さらに安井かずみと共に制作した1979年のアルバム『パパ・ヘミングウェイ』からレゲエのリディムを取り入れた『Around The World』を。アーネスト・ヘミングウェイ所縁の地、バハマ・ナッソーのコンパス・ポイント・スタジオ小原礼高橋ユキヒロ坂本龍一大村憲司を引き連れ録音した傑作。

 


音譜1970年から頭脳警察としてデビューしたPANTA中村治雄)のパンタ&ハル名義による1979年リリースの傑作アルバム『マラッカ』から『つれなのふりや』。レゲエのリディムに乗り、ことば遊びのような詩が綴られていく。

 

 
レゲエつながりで。キャロルのギタリストだった内海利勝がバンド解散後にジャマイカのコーラスグループ、ザ・シマロンズとコラボレートした1976年リリースのアルバム『GEMINI』から『星の下に』を。日本人による最初の本格的なレゲエじゃないかな。因みに。セクシーなカバー・アートはカルロス・サンタナの弟、ホルヘ・サンタナの1978年のファースト・ソロ・アルバムの有名なジャケにも影響を与えた(のかな?)。
 


音譜サディスティック・ミカ・バンド解散後、1976年に高中正義がリリースしたアルバム『SEYCHELLES』から、爽やかな夏向きの曲『トーキョー・レギ』(当時はレゲエのことをレギと呼んでいた)。
 

 
音譜南佳孝の、1980年リリースのアルバム『モンタージュ』から。レゲエのリディムが心地いい『ミッドナイト・ラブ・コール』


音譜さらに。石川セリの1977年リリースのアルバム『気まぐれ』から。『ミッドナイト・ラブ・コール』のカヴァーを。透明感があって。こっちも好きだな。
 


🎦昭和ならではの映画を。1971年に藤田敏八がしらけ世代の気だるく無軌道な若者達の退廃を描いた傑作『八月の濡れた砂』。主演は村野武範広瀬昌助テレサ野田藤田みどり。アンニュイな主題歌は石川セリが歌った。

 🎦石川セリの主題歌が流れるエンディングを。


📖1969年から映画や天井桟敷の舞台の女優として、また作家としても活動。1973年には伝説的な天才アルトサックス奏者、阿部薫と結婚。その存在自体がひとつのメディアとなり1970年代を体現した後、1986年に異常な速度で燃焼した、その人生を自死という形で終えることに。
 
彼女のセカンド・コレクション第3集『恋愛嘘ごっこ』は「悪夢と憧憬にみちていた」十代の回想から、天井桟敷とのフランス滞在記まで、70年代初期のエッセイを収録されているので昭和を感じるにはうってつけ。
 
📷️彼女のポートレイトを。その個性や存在感は圧倒的。
 
 
音譜1969年に寺山修司が作詞した『時には母のない子のように』でデビューし、大ヒットを放ったカルメン・マキギタリスト、春日博文らと共に自らのバンド、カルメン・マキ&OZの、1975年のアルバムから、少々ドラマチック過ぎる曲『私は風』

 


📖1959年に書いた短編小説『パルタイ』で文壇デビューを果たした倉橋由美子の、1984年に上梓された『大人のための残酷童話』『グリム童話集』『ペロー童話集』『ギリシャ神話』『日本昔話』などから題材を取り、倉橋由美子曰く「有名な童話や昔話を換骨奪胎したり煮詰めたりして作りました」と。僕が持っている版の挿し絵には山下清澄の幻想的な銅版画が添えられていて、喫茶店でパラパラ眺めるだけでも、(ほっこりするかどうかは保証の限りではないけど)ステキな時間が過ごせるのは間違いないと思うな。

 
🎨銅版画家、山下清澄【Kiyozumi Yamashita】(1941~)の作品には19世紀末の象徴主義的なデカダンスが香る。
 
 
 
 
 
 
 
 

音譜最後は。1973年にリリースされた荒井由実のデビュー・アルバム『ひこうき雲』から。このアルバムがリリースされる前に、人気ラジオ番組「パック・イン・ミュージック」馬場こづえのMCの日に流された曲。それまで誰も聞いたことがなかった新しい音楽にリスナーは興奮したらしい。名曲『ベルベット・イースター』

 


イメージの中にある「昭和」を手繰り寄せるために。思考よりも直感や感覚で書いているので、まとまりがなく、どこか迷走したような記事になっているけど。まぁ、それはそれでいいかな、と思ってる。

 

今回はこの辺で。
じゃぁ、また。
アデュー・ロマンティークニコ