Romantique No.576『アートの現在形~2024年春夏秋冬コレクション②』 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

 
 
 

                     Adieu Romantique No.576

  『アートの現在形~2024年春夏秋冬コレクション②』

 

僕の好奇心を擽り続けているアートを自由気ままにキュレートしつつ、アートに対する(アーティストに対する)僕なりの想いも適当に混ぜながら綴っていこうと書き始めた『アートの現在形~2024年春夏秋冬コレクション』の、その2回目。

 

前回の記事の最後に。「今、絵画やアート作品を投資目的じゃなく、個人の、少し贅沢な趣味として比較的安価に購入することが密かなブームになっているらしい」ということを書き、「他人の評価云々ではなく、個人の、自分自身だけの価値観や審美眼でアートを買うこと。それはアートの本質に近づく行為のような気がする」と書いた。

 

🎦そういった想いを引き継ぐように。まずはそういったことをしみじみと感じさせてくれる1本の映画のことから。もともとNHKの番組を制作していた佐々木芽生【Megumi Sasaki】が寄付を含め独自に資金を集めて制作し、2008年に公開されたドキュメンタリー『ハーブ & ドロシー~アートの森の小さな巨人』【Herb & Dorothy】のこと。

 

主人公は1922年にニューヨークのハーレムで生まれ、高校を中退して従軍した後、郵便局員となったハーブ・ヴォーゲルと、ニューヨークの郊外で生まれ育ち、図書館の司書となるドロシー。共に平凡な公務員として働いていたふたりはやがて出会い、共に画家を目指していたという共通の価値観や考え方に惹かれ合い、1962年に結婚する。その後、ふたりはドロシーが稼いだお金で生活費のすべてを賄い、ハーブが稼いだお金のすべてをアート作品の購入費用に充てるようになる。もちろん、郵便局員としての収入なんてたかが知れている。だけどふたりは「アートに対する情熱」と「アートを見る眼」だけを頼りにまだ名前が知れていないアーティストのアトリエを訪ね、直接、アーティストと交渉しながら細々と作品を購入し続けていく(という)。購入に関してふたりが決めたルールは限られた予算で買える作品であること。そしてマンハッタンにある1DKの小さなアパートに入る大きさであること。そのふたつだけ。

 

そうして。徐々にふたりはニューヨークのアート界では知らぬ者がいないほどの存在になっていく。それから時は過ぎて。90年代の始め頃には、ふたりの小さなアパートは壁や天井、キッチンやバスルームまでがアート作品で埋め尽くされることになった。その数は実に4700点以上(すべてがオリジナル作品だ!)。ふたりは早くからコンセプチュアル・アートミニマル・アートの魅力に気付いていたので、コレクションの中にはクリストとジャンヌ=クロード夫妻テリー・ウィンタースシンディ・シャーマンロニー・ランドフィールドリチャード・タトルら、現在では巨匠と呼ばれるアーティストたちの作品も数多く含まれていた。

 
📷️若き日のヴォーゲル夫妻。コレクションのひとつロバート・マンゴールの作品の前で(でっかい作品やん)。
 

そして何より重要なことは、1992年にふたりはその収集してきたすべての作品をワシントンD.C.ナショナル・ギャラリーとアメリカ全土の50の美術館に50作品ずつを寄贈したことにある(このエピソードはこの映画の続編『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』【Herb & Dorothy 50×50】で伝えられている)。その行為は長年、公務員として働いて貰った給料で買い集めてきた作品を国が管理する美術館に寄贈するという、ある意味、恩返しであり、それはとても粋なアイデアでもあった。92年当時、既に世界的に有名になったアーティストの作品を適当に売りに出すだけでふたりは億万長者になれたというのに。

 

とても理想的なアートとの接し方(もちろん。ふたりの、このようなアートとの接し方だけがすべてではないとしても)。誰にでもできることじゃないし、ほんとうに素敵な、まるでお伽噺のような話だと思ううーん

 

アートを目の前にして。難しい理屈や他人の批評なんて要らない(参考になったり、後付けでハッとすることはあるにしても)。その作品を観た人が自らの直感と感受性、審美眼だけを信じて。そのアートが「好き」か「嫌い」か。それだけで十分じゃないか。

 

それじゃぁ、という訳で。前回同様、まずは音楽を🎵僕にとってアートと音楽はどこかで繋がっていると思っているから。

 

音譜まるで妖精のように歌う、ジョー・マンゴー【Jo Mango】が率いるバンドの美しい曲『The Black Sun』

 

🎨イギリスの女性アーティスト、サラ・ジャレット【Sarah Jarrette】の作品。宝石のように眩く。観る者を幻惑するような最近の作品では輪郭が消え、アブストラクト化していきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 
 
 📷️サラ・ジャレットのポートレイト。
 
🎨カナダで活動する女性アーティスト、ジュリー・リガー・ベルエア【Julie Liger-Belair】。彼女にとって大切なものばかりを集めて制作された、箱庭のようなコラージュ作品にはイノセンスとノスタルジーが溢れてる。
 
 
 
 
 
 
 
 
📷️ジュリー・リガー・ベルエアのポートレイト。
 
 🎨オハイオ州クリーブランド出身の女性アーティスト、マギー・テイラー【Maggie Taylor】(1961~)が描いた、不思議さとノスタルジーが同居するようなシュルレアリスティックな作品。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
📷️マギー・テイラーのポートレイト。
 
🎨オランダ生まれの女性アーティスト、タマラ・ミューラー【Tamara Muller】(1975~)の作品。作品には常に彼女自身が描かれていて、自身の過去やトラウマのようなものまでがナルシズム的に投影されているような気がする。
 
 
 
 
 
 
 
 📷️タマラ・ミューラーのポートレイト。
 
🎨子供の頃の忘れられない想い出や大切なものが詰め込まれた、カナダの女性アーティスト、ヒーザー・マーレイ【Heather Murray】コラージュ。
 
 
 
 

 
 
📷️ヒーザー・マーレイのポートレイトを。
 
音譜今回のアートにぴったりだし、春を待ち侘びる気持ちにもぴったりの曲かな。シンガポールの男女デュオ、アスピデイスラフライ【Aspidistrafly】『Landscape With A Fairy』。タイトル通り。正真正銘の妖精🧚の曲、妖精🧚の映像。キラキラ✨して眩い。

 

🎨僕のブログでは何度も何度も紹介している、同じくカナダ出身のアーティスト、ドミニク・フォーティン【dominique fortin】(1974~)。鳥や動物たちや森と会話ができる少女の物語、というような感じの、とてもナイーブでイノセントなアートだと思う。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 

 

 
 
 
📷️ドミニク・フォンテーン自身からも、不思議な魅力を感じ取ることができる。
 
音譜ローリー・カレン【Lori Cullen】の、2009年リリースの名盤『Buttercup Bugle』のオープニングを飾ったHappyでとても可愛らしい曲『Box Of Things』

 

🎨ジョージア州コロンバス生まれのアーティスト、ボー・バートレット【Bo Bartlette】。タッチは伝統的なアメリカのリアリズム。アンドリュー・ワイエス的であり、都会の片隅を描いたエドワード・ホッパーのネイチャー版のような気もするし。まぁ、リアリズムと言いながら、どこか現実味のない世界は「ここではない何処か」へ連れて行ってくれるような感じがして僕の感受性にぴったりフィットするんだ。
 
 
 
 
 
 
 
🎨この感じはデヴィッド・ホックニー的とも。
 
 📷️作品を前に立つボー・バートレットのポートレイト。
 
 🎨セントルイス生まれの女性アーティスト、ゾーイ・ホウク【Zoe Hawk】(1982~)の、Girlyでシュルレアリスティックな作品を。
 
 
 
 
 
 
 
 
 🎨彼女が描いた自画像も個性的だよね。
 📷️ゾーイ・ホウクのポートレイト。
 
 🎨イスラエル生まれの女性アーティスト、
ジュリー・フィリペンコ【Julie Flilipenko】。彼女の作品には例えば高橋真琴が描いたような(ちょっと違うかうーん)、昔の日本のキラキラした「KAWAII」と、Strangeなイマージュが同居していて、とても面白いと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
📷️ジュリー・フィリペンコのポートレイト。
 

🎨アートとデザインの間を自在に往き来するアーティスト、ヨハンナ・グッドマン【Johanna Goodman】。

ファッションに寄っているところが魅力的だし、とにかくイメージが面白過ぎ。因みにこの人の作品は日本のCity Popなバンド、キリンジがアルバム『cherish』のアルバム・カヴァーに使っている。

 🎨こちらはヴァージョン違い。

 

 

 

 

 

 

 

 

🎨ブラックなユーモアも効いている。

 

🎨キリンジと同じく。ヘルシンキ・ラムダ・クラブのアルバム・カヴァーにも彼女の作品が。

📷️ヨハンナ・グッドマンのポートレイト。

 

今回は、気が付けばボー・バートレットを除いて女性アーティストの作品ばかりになった。僕の中では今、音楽は女性SSWがとても面白いと思っているのと同じように、最近のアートもまた女性たちの方が断然、面白いと思っていて(過去のブログでも女性アーティストたちの特集を何度も書いてきている)。もちろんそれは、あくまでも僕の趣味嗜好や主観に過ぎないし、何ら根拠もないのだけど。まぁ、今の男性アーティストよりも女性アーティストたちの方が自身のイマージュにとても忠実に、自分の世界を柔らかく自由に表現しているような気がするな。

 

理屈じゃなく。アートは自由で面白い。

「More Art , More Life」

 

それじゃぁ、また。
アデュー・ロマンティークニコ