Bar Adieu Romantique No.006 『Into The Blue』。 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

僕の架空音楽バー

『Bar Adieu Romantique』へ、ようこそ。

 

『Bar Adieu Romantique』ではお越しいただいた方に毎回、ご挨拶代わりに僕の独り言【Monologue】を書いたFree Paperをお渡ししている。

 

           Romantique Monologue No.006

          『Into The Blueに憑かれて

             

 

「Blue」について。そう、総称としての「Blue」のこと。日本語では「青」、「蒼」、「藍」、「碧」とも。ひとつの色の呼称に過ぎないけれど、それだけでは収まらない。それは観念であり、哲学であったり、感情であったり。捉え方ひとつで、さまざまな世界を映し出す。時に空や海の「永遠」を。「ミッドナイト・ブルー」と表現された真夜中の雰囲気を。「マリッジ・ブルー」と表現された(言いようのない)憂鬱な気持ちなど、輪郭がないアブストラクトな空間や感情を表すときに。

 

パブロ・ピカソが青を基調とした作品を描いた1901~1904年の時期は「青の時代」と呼ばれた。アメリカの黒人たちが置かれた、その過酷な状況から生まれた音楽「Blues」は「Blue」が語源になった。アルフレッド・ライオンが1939年に創設したJAZZレーベルの名前は『Blue Note』。そこから数々のBlueなアルバムがリリースされた。

 

日本のロックの起源であるはっぴいえんどはもともとヴァレンタイン・ブルーというバンド名だった。村上龍は1976年に「限りなく透明に近いブルー」を書き、文壇デビューした。北野武が撮った一連の作品の、鮮烈な暴力描写と対比するような詩的な映像は「北野ブルー」と呼ばれた。

 

さらに。フランスの映画監督リュック・ベッソンは1988年に地中海を舞台にした『Le Grand Bleu』水深100mの素潜りの、深い「Blue」の世界を撮った。フランスのヌーヴェル・ヴァーグを代表する映画作家のひとり、エリック・ロメールは1986年の映画『レネットとミラベル~四つの冒険』【Quatre Aventures de Reinette et Mirabelle】の最初のシークエンスで、夜明け前に虫や草花が寝静まり、すべての音が無くなる、ほんの僅かな一瞬に訪れる「青い時間」【L'heure Bleue】のエピソードを撮った。

 

1965年にジャン=リュック・ゴダールが撮った『気狂いピエロ』【Pierrot Le Fou】のラスト・シーンでは、地中海の海と空を背景に主人公フェルディナンが顔を青く塗り、ランボーの詩「永遠」の一説を詠んだ後、自爆した。「また見つかった 何が?  永遠が  海と溶け合う太陽が」

 

そして。詩人の谷川俊太郎はこんな詩を書いている。(抜粋)どんなに深く憧れ どんなに強く求めてもを手にすることはできない すくえば海は淡く濁った塩水に変わり 近づけば空はどこまでも透き通る 人魂もまた青く燃え上がるのではなかったか は遠い色」。

 

僕自身も。30年くらい前に、梅田の複合商業施設が主催した「イラストレーション大賞」のようなものに応募した時の絵には「柔らかい少女の飛沫〈Blue, Blue Mix〉」というタイトルを付けた(知らんけどイヒ)。いつの頃からかは分からない。だけど僕も「Blue」に魅かれ続けている。

 

              ※※※※※※※※※※※※※※※

 

「Blue」について書いていたら、いろんな感情が溢れ出してきた。だけど。感情は日々、移り変わるので、今日の、この微妙で、とても曖昧な感情を表現するために、ひとつの詩を書いてみることにした。そう。詩はそういう時のためにあるのだと思うから。

 

 

 

         『無題』

 

 

 この捻じれた世界の上に

 つま先で立っていると

 

 ただ

 つま先で立っていると

 

 震えたり

 怯えたり

 緊張したり

 硬直したり

 弛緩したり

 伸び縮みしながら

    輪郭のない

 迷子の感情が

 言葉を探しはじめる

 

 

 この捻じれた世界の上に

 つま先で立っていると

 

 ただ

 つま先で立っていると

 

 詩を書くことを

 思い出したんだ

 

 世界と僕との関係について

 僕と世界との繋がりについて

 

 そして

 

 世界の始まりの始まりのこと

 世界の始まりの終わりのこと

 世界の終わりの始まりのこと

 世界の終りの終わりのこと

    についても

 

 

 

 

                 「Bar Adieu Romantique」店主より

 

そろそろ『Bar Adieu Romantique』のオープンの時間だ。

 

今回『Bar Adieu Romantique』がキュレーションするプチ企画展は『Into The Blue。僕の独り言と連動させて、いろんな「Blue」の世界を並べてみた。
 
🎨クライン・ブルーと呼ばれた「Blue」を基調とした作品を制作し続けたイヴ・クライン【Yves Klein】(1928~62)の作品を。 それはアートであり、主張であり、詩であった。
 
 
 
 
🎨「空間主義」を宣言したルーチョ・フォンタナ【Lucio Fontana】(1899~1968)の「Blue」と、そして「切り裂かれたキャンバス」のコラボレーション。
 
 
 
 🎨現時点で活動しているアーティストの中で。最高の評価を得ているゲルハルト・リヒター【Gerhard Richter】(1932~)の「Blue」を。

 
 
 
 🎨僕の大好きなアーティスト、サイ・トゥオンブリー【Cy Twombly】(1928~2011)の「Blue」。
 
 
🎨アメリカのアーティスト、エベン・ゴフ【Eben Goff】(1977~)のエッチングによる「Blue」。

 
 
🎨イスラエルの女性アーティスト、ドリット・ブラウアー【Dorit Brauer】の「Blue」。
 
 
🎨サム・フランシス【Sam Francis】(1923~1994)の「Blue」の飛沫。
 
 
 
 
🎨瀧口修造【Shuzo Takiguchi】(1903~1979)の、デカルコマニーによる「Blue」。
 

 
 
🎨加納光於【Mitsuo Kano】(1933~)の「Blue」。

 
 
📷️ミュージシャンでもあるスティーヴ・ハイエット【Steve Hiett】が撮った、深い「Blue」。
 
 
 
 
 
音楽も。今回はテーマ性を持たせて、「Blue」に関係するアルバムや曲をランダムにセレクトしてみた。
 
音譜オープニング曲は、ボブ・ディラン【Bob Dylan】の、1975年のアルバム『血の轍』【Blood On The Tracks】から『ブルーにこんがらがって』【Tangled Up In Blue】。僕も「Blue」にこんがらがっている。
 

 
音譜ヴェルヴェット・アンダーグラウンド【The Velvet Underground】の1969年にリリースされたサード・アルバムから名曲『Pale Blue Eyes』を。美しいなぁ。
 

 
音譜ジャン=ジャック・ベネックスが1986年に撮った映画『ベティ・ブルー』【37°2 Le Martin】の、ガブリエル・ヤレドが音楽を担当したオリジナル・サウンド・トラックから【Betty et Zorg】を。

 

 
音譜ニーナ・シモン【Nina Simone】の、1957年録音のデビュー・アルバム『Jazz As Played In An Exclusive Side Street Club』から『Little Girl Blue』
 

 
音譜何の説明も不要な、マイルス・デイヴィス【Miles Davis】の1959年の歴史的アルバム『Kind Of Blue』。そのオープニングを静かに、そして美しく立ち上げる『So What』を。
 

 
音譜アン・バートン【Ann Burton】の1967年のアルバム『Blue Barton』から『The Good Life』
 

 
音譜僅か28歳で亡くなったビヴァリー・ケニー【Beverly Kenney】のアルバム『Lonely And Blue』からタイトル曲を。アルバムのリリースは2007年だけど、録音は1950年代。
 

 
音譜UKジャズから、2022年の「Blue」Songを。Flo Blue『Another Love Song』


音譜僕にとっての青春の音楽。トレイシー・ソーンベン・ワットによるデュオ、エヴリシング・バット・ザ・ガール【Everything But The Girl】の1985年のアルバム『Eden』から『Tender Blue』を。
 

 
音譜エキゾチック・サウンドの名盤、レス・バクスター【Les Baxter】の、1967年のアルバム『African Blue』から『Girl From Uganda』
 

 
音譜1983年にリリースされたニュー・オーダー【New Oder】の12inchシングル『Blue Monday』。因みに、この曲。12inchシングルでは最も売れた曲らしい。
 

 
音譜ジ・オーブ【the orb】の1992年のアルバム『U.F.ORB』からのシングル曲『Blue Room』を。
 

 
音譜ポール・ウェラーミック・タルボットによるデュオ、スタイル・カウンシル【Style Council】の、1984年のファースト・アルバム『Cafe Bleu』から『My Ever Changing Moods』。フランス語で「」はブリュと発音し、bleuと表記するんだよねもぐもぐ
 

 
音譜ジョニ・ミッチェル【Joni Mitchell】の4枚目のアルバム『BLUE』から『All I Want』を。
 

 
音譜トム・ウェイツ【Tom Waits】の、1978年のアルバム『Blue Varentaine』からタイトル曲を。
 

 
音譜リンダ・ロンシュタット【Linda Ronstadt】の1977年のアルバム『夢はひとつだけ』【Simple Dreams】から『ブルー・バイユー』【Blue Bayou】
 

 
音譜1978年にリリースされた山下達郎のアルバム『Go Ahead !』から名曲『Monday Blue』を。
 

 
🎨1978年にニール・ヤング【Neil Young & Crazy Horse】のLiveアルバム『Rust Never Sleeps』から『My My Hey Hey (Out Of The Blue)』「Into The Blue」じゃなく「Out Of The Blue」の歌。セックス・ピストルズを脱退した時にジョニー・ロットンが言った「Rock Is Dead」という言葉を受けて、ニール・ヤングはこの曲で「Rock and Roll Can Never Die」と歌った。因みに。デニス・ホッパーは1980年にこの歌をベースにして『Out Of The Blue』という映画を撮っている。
 

 
 音譜最後は。ビートルズ【The Beatles】のラスト・アルバム『Let It Be』に収められたジョージ・ハリスンの曲『For You Blue』で、揺らぎながら、軽い感じで終わることにするね。

 

 
Blue」に染まって。本日は『Bar Adieu Romantique』というより、Bar『Into The Blue』な感じに。
 

それじゃぁ、また。

アデュー・ロマンティークニコ