こんにちは。僕のブログ【アデュー・ロマンティーク】へようこそ。
今回のテーマは、日本のアート。僕の過去のブログ記事【ロマンティークNo.0023『少女愛の美学』~金子國義と宇野亜喜良と、その他を語る】の中でも少し紹介した、日本を代表するイラストレーターであり、グラフィック・デザイナーである宇野亜喜良と、作風や精神性は明らかにアートの域に到達している、その作品のこと。少し拡げて語らせていただきます。
そうは言いながら、さっそく話は逸れるけれど。そもそも。アートとデザインなんていう、線引きなどはもともとなかったのだ。所謂、広告的なグラフィック・デザインは1800年代末頃のアールヌーヴォーの流れの中や、グスタフ・クリムトを中心としたウィーン分離派の中ではポスターなども含めて、芸術活動の一環として画家自体が制作していたし、1900年に入ってからもアールヌーヴォーを引き継いだ形になったアールデコや、1919年に創設された「バウハウス」からは、現在の広告的なグラフィック・デザインや工業デザインに繋がる数々の重要な作品が誕生している。結局は広告や宣伝を担ったものだからアートではない、などといった価値基準ではなく、作品を制作する作家の精神性がアートであるのか、広告的なグラフィック・デザインであるのかを判断するのだと考えたい(さらに、突き詰めれば、いつものように作品こそがすべてで、区分けなんて「何だっていい」、ということになってしまうのだが)。
話を本題に戻そう。
宇野亜喜良のこと。宇野亜喜良は1934年生まれ。もともとは1950年代中頃にカルピス食品工業の宣伝部に入社。その後、日本有数の企業が出資し合って設立された、日本のデザイン会社の草分けである、(原弘や田中一光、亀倉雄策らが参画した)日本デザインセンターに入った後、64年には横尾忠則らとスタジオ・イルフィルを立ち上げる。1年ほどでスタジオ・イルフィルを離れて独立した後も広告・宣伝のイラストレーター、デザイナーとして精力的に活動し、1960年代後半のアンダーグラウンドなカルチャーブームに乗って、寺山修司の舞台美術や、その舞台の宣伝用ポスターに携わるようになり、その頃から、その作品はもちろん、宇野亜喜良自身もファッションリーダーとして徐々に高い人気を獲得するようになる。また、私生活では沖雅也と夏純子が主演した『高校生無頼控』(1972年)にも出演した女優・集三枝子(カッコいい女性です)と結婚。現在に至るまで本の挿絵や表紙、絵本、さまざまな企業・団体のポスター、CDのカヴァーアートなどを手掛け、別の動きとしてアートのキュレーションを行うなど、媒体やジャンルを軽く飛び超えた幅広い活動を続けている、と。ここまでは宇野亜喜良の一般的な略歴の説明に過ぎないのだが。
それでは。僕自身、宇野亜喜良の作品の、一人のファンであることを告白したうえで、僕なりの宇野亜喜良の作品の魅力を伝えたいと思う。
宇野亜喜良の作品の魅力。それは1本のペンと淡い色彩で描かれた少女たち。時に「所在なげ」で、「捉えどころない表情」。時に「悪戯っぽく誘ってくるような視線」。「可愛いエロティシズム」。「甘美な危うさ」。或いは、それは「少女たちのイノセンス」であり、「少女たちの秘密」でもあり、それらのすべてが、宇野亜喜良の作品の魅力なのだと思う。
「可愛らしい」。もはや。そのように表現するしかできない世界。
少女たちのことを、僕はよく理解できない。僕からすれば。とても遠くに、まったく僕の手の届かないところに棲んでいるような、少女たち。僕とはまったく異なる感情を持ち、異なる世界を持つ少女たち。
僕は男だから余計にそう思うのかも知れないのだが、そんな少女たちを前にして、僕は無力である。
だから。僕は彼女たちを『不思議の国の少女たち』と名付けた。
だとすれば。何故、僕よりもずっと年配の男性である宇野亜喜良氏が60年代の頃から、少女たちの、不思議の国を創造できたのだろうか。
僕にはそのことが不思議だし、その答えを見つけることはできない。
けれども、その『不思議の国の少女たち』が僕にとって永遠に魅惑的であり続けることには変わりない。
容易に近づくことができないけれど、そこから離れられない魅力とでも言えばいいのだろうか。
これからも。僕はこの、『不思議の国の少女たち』を遠くから見守っていたいと思う。
それでは、また。アデュー・ロマンティーク。
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