こんにちは。ようこそ僕のブログ【アデュー・ロマンティーク】へ。
さて、自分自身の気持ちが原因で、少し脱線してしまった『モードと写真の美しき関係』シリーズ、復活です。その8回目の、今回の記事は、ピーター・リンドバーグとスティーヴン・マイゼルが活躍した90年代から時代を大きく遡って、1930年代から40年代にかけて活躍したアーウィン・ブルーメンフェルドと、主に1950年代から60年代に活躍したフランク・ホーヴァット、という写真家とその作品のこと。ブルーメンフェルドはモノクロ写真もあるけれど、早い時期からカラー作品を撮っていて、美しく、しかも、その構図や写真的アイデアが生み出した、他の誰にも似ていない超個性的な作風が魅力。一方、ホーヴァットは基本的にモノクロのファッション写真で構図がとても斬新、かつスタイリッシュな作風である。
と、ここで(いつものように)話は脱線することになる。今、僕は『モードと写真の美しき関係』というテーマをシリーズ化して、ずっと書いているけれど、では『僕とモードの美しき関係』はどうなんだろうか、と自問自答している。「いつもお洒落っぽい記事を書いている、そんなあなた(=僕)は、そんなにお洒落なのか。モードを体現しているのか」というような自問自答。
そもそも。僕は若い頃から「コム・デ・ギャルソン・オム」か「y's」は好きだったし(もちろん値段が高かったので、ごくたまにしか買えなかったけれど)、カジュアルな古着も大好きだった(どちらかと言えばアメカジだな)。僕のブログでもそうだけど、音楽も映画もアートも節操なく、いろんなことをテーマに書いてしまうという、そんな性格が自分自身のファッションにも表れていた、ということだと思う。何だかバラバラだったな。あるところは、すごく拘るのに、あるところは全然まったく構わない、みたいな。ハイファッションについては。当時も今も手は出せないのだが、有名メゾンのクリエイションについては興味津々だったので、80年代から大内順子の「ファッション通信」をずっと観てきていた、ということがあった。各メゾンが「春・夏」と「秋・冬」の新作を発表するときは、それぞれのテーマが表現されているので、とてもワクワクして観てきたのだと思う。もちろん昔も今も、僕自身はファッション界の人間であったことは一度もないのだが。
あとは。もともと雑誌が大好きだ、ということがあって。男のくせに(それって自分が自分にセクハラですよ)、女性向けのファッション誌、例えば「流行通信」(横尾忠則がアートディレクターをしていた時代の何冊かは後から手に入れた)や「マリ・クレール」や「anan」は80年代から結構、読んできたし。「ヴォーグ・ジャパン」は創刊時(1999年の創刊時は「ヴォーグ ニッポン」だった)からよく読んでいたという経緯があった。そのような中で、いつしかファッション写真家のことにも興味が湧き始め、その後も知的好奇心が刺激されながら、何となくモードと僕の関係が出来上がっているということになる。「美しい関係」があったかどうかは別として。
さて話は戻って。アーウィン・ブルーメンフェルド【erwin blumenfeld】 (1897年~1969年)のこと。ブルーメンフェルドの個性的な魅力であり、その際立った特異性は、20世紀の重要な芸術運動でもあったシュルレアリスムの影響を受け、その試みの一環として表現されたファッション写真であったことに尽きる。ファッション写真でありながら、アートであり、逆にアートでありながら、ファッション写真でもある、という。写真家としての活動は1930年代から1950年代にかけて。主にアレクセイ・ブロドヴィッチのアート・ディレクションのもと「ハーパス・バザー」に、フォトモンタージュ(多重露光)やソラリゼーションなど、シュルレアリスムの技法を使ったファッション写真を持ち込んだのである(一見、普通のファッション写真もあるが)。
さて、それでは。アーウィン・ブルーメンフェルドの作品と、そのオマケとしてファッション写真家ではないが、偉大なるシュルレアリストであり、写真家であり、おそらくはブルーメンフェルドにも大きな影響を与えたと思われるマン・レイの作品を少しだけ紹介してみようと思う。
■「ハーパス・バザー」ではなく、「VOGUE」の表紙を飾った作品と、同じセッションの作品。時代の空気感が漂う独特の、ピンクが混じったようなレッドが実に魅力的。シュルレアリスムとは関係なさそうだが、ブルーメンフェルドの中で僕が一番大好きな作品でもある。
■こちらは少し色調が異なるが、印象はこっちの方が強いかも。
■これはブルーメンフェルドの代表作。ファッション写真というよりは、モードが記号化した作品なんじゃないかなと思う。口元のホクロが効いている。
■同じシリーズだと思うが、こっちは何故だか普通に見えてしまう。正面からの作品だからか。想像力が働かないのだ、な。
■鮮やかでスタイリッシュな作品だが、構図とモデルの無表情さはシュルレアリスム的かも。
■手が4本のご婦人。紛れもなくシュルレアリスムのイマージュである。
■以下、独特な色彩の作品が続く。
■モノクロームの作品だがシュルレアリスムの魅力に溢れている。
■エッフェル塔とモデル。この写真はピチカート・ファイヴが解散してからの野宮真貴のソロ・アルバムのカヴァーに使われたような気がするな(間違っているかも)。
■モノクロ作品が続くが、どれも
ファッション写真ではないがオマケとして。シュルレアリスムの繋がりでマン・レイの名作を並べてみた。オマケというより。こちらの方がインパクトが大きいのは仕方がない(いつか、マン・レイだけで記事を書いてみたいと思う)。
■有名な作品。シュルレアリスムはエロティシズムと結ばれているのだ。
フランク・ホーヴァット【frank horvat】(1928年~)はイタリア出身の写真家。 第二次世界大戦中に家族とともにスイスに亡命。戦争終了後、イタリアに戻る。1940年代半ばには写真の撮影を始め、。1950年代初めからフリーの写真家として活躍。当初、報道系の写真を志向し、ライフなどの雑誌で活動するが、やがてファッション系の写真へ重心を移していった。「elle」や「vogue」、1960年代には、ハーパース・バザーへと移り、1970年代後半まで活躍。 1959年から1961年まではマグナム・フォトのメンバーでもあった。
■大胆な構図がホーヴァットの魅力だという、その証し。キマッている。
■とても可愛らしいシューティング。
■ピチカート・ファイヴのcdシングルのカヴァーに引用された(と僕は思っている)写真。
■ホーヴァットの写真にはファッショナブルさと、可愛らしさが同居している。
不自然極まりない構図と色彩が、強いインパクトを与える作品。
■ファッショナブルさと可愛らしさと。そして映画のワンシーンのような作品が続く。
■飛躍し過ぎているかもしれないが、、ビートルズのイギリス・オリジナル・デビュー盤の「please please me」と、2枚組の2部作ベスト、通称「赤盤」、「青盤」のアルバム・カヴァーに繋がる写真だと思う。
今回は、アーウィン・ブルーメンフェルドとフランク・ホーヴァットの作品を紹介したが、僕自身は特にアーウィン・ブルーメンフェルドに魅力を感じている。アンドレ・ブルトンが宣言した「シュルレアリスム」という、普通の人にはひじょうに分かり難い芸術を(拡大解釈して、おいしいところだけを出してきているようなところはあるにしても)、一般の人が目にするような雑誌にファッション写真として提示した、その柔らかな新しさやpopな感覚は、今の時代にこそ有効なんじゃないかな、と考えている。
それでは、またね。
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