ロマンティークNo.0113 シュプレマティスムとロシア構成主義を再構成する僕の主義。 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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こんにちは。僕のブログ【アデュー・ロマンティーク】へようこそ。

今回のテーマは『シュプレマティスムとロシア構成主義』。何やら難しそうですが、むつかしいことを書く気はありません。1910年代。300年あまり続いたロマノフ王朝を倒し、世界初の社会主義国家を樹立させるためのロシア革命の真っただ中にあって、革命のためのプロパガンダ・アート(プロパガンダとは、人々の思想や行動を誘導する宣伝のこと)が、絵画、演劇、建築、映画、写真、デザインといったあらゆるジャンルを巻き込みながらロシア・アヴァンギャルドという名のもとに誕生したところから、すべてが大きく動き出していく(試験はしないので、メモを録らなくても大丈夫ですよーおーっ!)。

 

そしてロシア・アヴァンギャルドの動きの中から誕生したふたつの芸術が今回のテーマとなるシュプレマティスムとロシア構成主義ということになる。芸術作品としてはシンプルにおもしろいと思えるし、グラフィック・デザインの源流としても極めて興味深い、その、それぞれの代表的な作品をざぁーと紹介していこうと思っている。

 

今回の記事のタイトルは『シュプレマティスムとロシア構成主義を再構成するというのが僕の主義』。ほんとうに、単純な内容を書こうとしているのに、ややこしいタイトルを付けてしまった。ごめんショック。だけど、ほんとうは。僕の頭の中で一度、再構成しなければ、うまく説明ができない「ややこしいもの」であることも確かなのであった。

 

まずは「シュプレマティスム」から簡単な説明を。「シュプレマティスム」は絶対主義、至高主義の芸術で、カジミール・マレーヴィチがその絵画様式を主張。絵に込められた意味を徹底的に排除した抽象的作品を追求し、自然に存在する対象物の意味を完全に無くした。「純粋な感覚から生み出す無対象絵画こそ芸術である」、と。例えば黒の正方形は、観る側にはただの四角形にしか観えない。けれど「シュプレマティスム」は対象を持たない芸術なので、観る側に「思考すること 」を促してくる。対象がある絵画では、観る側は「上手い」とか「下手だ」とか、「好き」とか「嫌い」とか、何らかの価値基準をもって評価するという、言わば観る側に主導権があるのだが、対象を持たない黒の正方形は、その作品自体が主導権を持つことになり、それによって観る側は、その黒い正方形の中に隠されているものについて思考し、或いは混乱することになる。

 

結果的にシュプレマティスムはそれまでの芸術を完全に否定することで新しい価値を生み出し、抽象絵画という、まったく新しい芸術のひとつの到達点に行き着いたのである。

 

さて。シュプレマティスムの作品を純粋に楽しみながら観ていくことにしよう。

 

■エル・リシツキーによるキレっキレの作品。

■エル・リシツキーの作品を引用した坂本龍一のアルバム『B-2UNIT』のカヴァー。音楽はデニス・ボーヴェルによるDUBを導入。非常にラディカルなもので、とても面白かった。
 ■カジミール・マレーヴィッチの『Black Cross』は1923年の作品。まさに完璧な抽象。絶対の美。
 ■四角とか丸とか台形とか。 マレーヴィッチの作品を続けて観ていこう。
 
 
 
 
 ■キュビズムの影響を受けていた頃のマレーヴィッチの作品。
■マレーヴィッチの作品を使った80年代ニューウェーブの、女の子バンド、レインコーツのアルバム。ディス・ヒートのチャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットが参加した。
 ■エル・リシツキーの作品を並べてみた。リシツキーは、マレーヴィッチの芸術的な哲学を応用し、グラフィックデザインに展開したのだと思う。
 

 

 

 
 
 
■ヴァシリー・カンディンスキーは、シュプレマティスムというより、過去の芸術の流れの中から、少しずつ自らの芸術哲学を築き上げてきた画家だと思う。後にはドイツのバウハウスで活動を行うなど、一貫して「抽象」を探求してきたかのように思えるのだが、その作品には温かな人間味を感じ取ることができる。
 
 
■この作品はパウル・クレーの作品のようでもある。
 
 
一方、「ロシア構成主義」は、シュプレマティスムとは異なった芸術的発展を見せる。もともとはロシア革命のプロパガンダ・アートの流れを汲みながら、ウラジミール・タトリン が制作した鉄板や木片を使ったカウンター・レリーフの中に構成(コンストラクション) を見出したのが始まりだと言われている。そのタトリンの思想を進化・拡大させたのがアレクサンドル・ロトチェンコというアーティストであった。ロトチェンコは「ロシア構成主義」の中心人物としてペインティング、グラフィック、立体、建築、雑誌や本のデザイン、インテリア、ポスター、そして最終的には写真という、あらゆる表現手法を実験し、実にインパクトの強い、アートというよりは、むしろグラフィックデザインに近い作品を数多く制作した。
 
さて。「ロシア構成主義」と言えば、取り敢えずはアレクサンドル・ロトチェンコである。彼の作品を紹介していこう。

 

■アレクサンドル・ロトチェンコの有名な作品。日本においては引用ではなく、例えばファッションモールなどのバーゲンのポスターとか、あらゆる場面で、単なるパクりとして頻繁に使われてきた。オリジナルのポスターでは「ニーギィ」(本を読もう!)というプロパガンダなのだが。それにしても。やっぱり、何でも汎用できるデザインだと思う。「家に帰ってきたら、うがいと手洗いを忘れないでねー」(いったい誰が誰に、こんな大声で言うのか)でもいいし、「昨日のあなたからのメール、誰かと間違っていたわよー」(そんな恐ろしいことを、こんなに明るく、元気に言わなくてもいいよね)でもいいし、「世界に愛と平和を!」(これなら庶民の声としてバッチリ合っているな)でもいいのかもしれない。何にでも使えてしまう。恐るべきロトチェンコのグラフィック・デザイン。

■この叫んでいる女性はリーリャ・ブリークという映画監督であった。

■ロトチェンコの、この作品を世界中に広めてしまったのが、ご存知、フランツ・フェルディナンドのセカンド・アルバムであった。

■シュプレマティスムのリシツキーとは異なり、どちらかと言えば「過剰」な、ロトチェンコの作品が続く。



 
 
 
 





■ロトチェンコの表現はデザインから写真へと変わっていく。

■写真の構図も大胆かつ独特なものだ。

 

 

 ■ロシア構成主義のアーティストであるバーバラ・ステパーノワは、ロトチェンコの奥様でもあった。彼女の、ファッション・デザインのような作品。

 
 

 今回のテーマはもともと僕の過去に書いたブログ記事【ロマンティークNo.0052 抽象的な意識を、そのまま抽象化する抽象絵画の具体的な試み】の中で最初に触れるべき内容であったと思うが、その時は現代に至る、大きな「抽象絵画」の流れを語りながら、素晴らしい具象絵画と較べても遜色のない価値があることを伝えたかったのであり、今回は「抽象」をフックにしながら「グラフィックデザイン」を語ろうと思ったのである。

 

シュプレマティスムとロシア構成主義の作品や、その作品を生み出した芸術的な哲学は、近代のデザインの基になるドイツのバウハウスにも大きな影響を与えることになり、その後も、その禁欲的で無駄のない哲学は、現在のグラフィック・デザインにおいても、常に新たな、進むべき方向性を示唆し続けているのだと思っている。

 

それでは、また。アデュー・ロマンティークニコ

 

 

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