細川忠興が、豊前四十万石を治めていた時のこと。
早朝、豊前小倉城を訪れる老人があった。
「はい、ごめんなさいよ。忠興殿は居るかな?」
「なんだ爺さん、ウチの殿様になれなれしい・・・。げぇっ!黒田のご隠居!!」
「いかにも。忠興殿に、『如水が来た。』と取り次いでもらえんかね。」
天下にその知謀を知られた大物の、突然の来訪に細川家中は肝を潰し、
城中は大騒ぎになった。
直接もてなす立場であり、数寄者として自他ともに認める忠興は、
なおさらである。
「こんな朝早くのお越しだ、朝飯も食っておるまい。
そのつもりで、手を尽くして料理いたせ。ぬかるなよ!」
「ははっ!!」
「お待たせしました、如水殿。して、本日の御用向きは?」
「なぁに、用とは他でもない。お前さん、ウチの息子と絶交しておいでじゃな?」
「・・・ええ、まぁ。」
「何とか仲直りして、前のように付き合ってもらえんかの~。」
「いかに如水殿の仰せでも、そればかりは聞けませぬな。」
「むぅ。では、お前さん方の子の代には仲良くやってもらう、
いうのはどうかな?」
「うーん・・・いや、我らが死んだ後の子孫の事まで、約束は成りませぬ。」
「ならぬか、ならぬか!じゃあ帰るわ、邪魔したね。」
そう言い捨てた如水は、せっかくの料理にも手を付けず、
さっさと帰ってしまったそうな。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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