ある時、織田信長公が、
「誰にても参れ。」
と仰せになったため、近習の小姓一人参って仰せを待った。
しかし、「もはやよし。」と仰せに成り、小姓は座より罷り出た。
そして再び、前と同じように人を呼ばれたため、
他の小姓が参ったが、これもしばし有って、
「いらず。」と仰せに成ったため、罷り出た。
また、やや有って、
「誰ぞ参れ。」とあり、また他の人が参った。
暫く有って、これも事無くて罷り出でる所に、座の側に塵が有るのを、
取って罷り出た所に、信長公が「待て。」と仰せあり、
「総じて人は心と気を働かすを以て良しとするものだ。
武辺というものは、かかるのも引くのも、
時の潮時を見るのが合戦の習いである。
其の方の只今の退き様、殊勝である。」
と褒められたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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