永禄11年(1568)9月28日、
足利義昭を奉じて上洛した織田信長は、9月28日、今日の東福寺に入った。
この時、連歌の宗匠である紹巴、および昌叱心前、
医師の半井蘆庵、雖知苦院道三、その他諸道に名を得ている者共、
また上下今日の年寄りと言って、仮初めの事にも出席して評議する者達が、
様々な捧げ物をして上洛への御礼を申し上げている中、
里村紹巴は末広がりの扇二本を、
台に据えて直に捧げた。
どうなることかと人々が注目する中、
紹巴は御前に進み出るとご挨拶よりも前に、
『二本手に入るけふのよろこび』
と申し上げた。
信長は之を聞くと、即座に句を継いだ。
『舞い遊ぶ 千代萬代の扇にて』
洛中の老若はこれを聞くと、言葉もなく、
「この人は猛き武士であるから、
寿永の古に木曽義仲が京入りした時のようになってしまうと思っていたが、
言葉に優しさも有り、もしかして、安心しても良いのではないか?」
そう、心の中にやや頼もしさを覚え、皆息を安めたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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