天下三陪臣の一人、堀直政の子で、後に村上藩十万石の祖となる堀直寄がまだ、
子供の頃のお話。
あるとき豊臣秀吉が茶室に入り、火をともし炭を入れようとした時である、
先に秀吉により切腹させられた、千利休の亡霊がにわかに現れた。
亡霊、黒い頭巾をかぶり座っていたが、見る見るうちに目が光り、
口から火が吹き出す。
余りの凄まじさに腰元たちは恐れおののいたが、
この時流石は秀吉、慌てず炭を入れ終わってから、
「無礼であるぞ!」
と一喝。するとこの化け物、利休の形が崩れ後ろに下がっていった。
さて、秀吉が茶室から出ると、当時十五歳の堀直寄に出会った。
そこで、
「今茶室に化け物がいるぞ。汝これを叱ってまいれ。」
これに直寄畏まり、先ず茶室に続く廊下の窓を全て閉じて、
化け物が逃げられないようにしてから茶室に入っていった。
が、そこにはもう、何もいなかった。
仕方なく引き返し、秀吉にこのことを伝えると、
秀吉のほうは直寄の勇気に感心し、
褒美として羽織を与えた、とのこと。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!