奥州仕置きの折のことである。
蒲生氏郷からの、「伊達政宗、異心あり。」の告発により、
京ではにわかに、政宗謀反との憶測が高まった。
悪い時は悪い方向に話は大きくなるもので、疑惑の目は政宗本人のみならず、
京の屋敷に人質として置いた妻にまで向けられた。
『政宗の妻と言う女は、実は偽者であり、政宗が本物と偽って置いたのだ。
彼は最初から秀吉公を騙していたのだ。』
そんな風説が広まったのだ。
秀吉の左右の者たちは、
「もし偽者とあれば、政宗は最初から秀吉様をたばかっていた言う事!
これは関白の沽券にかかわる事ですぞ!なにとぞ厳重な取調べを!」
が、秀吉はその話を一笑に付した。
「政宗は本物だと言って、妻を人質として差し出し、わしに臣従した。
政宗自身が本物だと言っている以上、これが実際に本物だろうが偽者だろうが、
わしにとっては同じ事だ。」
政宗ごときがどんな小細工をしようが、自分にはどれほどの事もない。
逆らえば、どの道潰すだけだ。
そんな秀吉の自信の程を伺わせるお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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