秀吉が天下を取ってからのこと。
京都の東山に松茸がたくさん生えていると聞き、
「松茸狩りをして遊ぼうではないか。」
と言い出した。
家臣たちが下見に行くと、すでに京の人々がほとんど採ってしまい、
僅かしか残っていない。
そこで、彼らは、あちこちから松茸を取り寄せて、
こっそりと山に植えることにした。
夜を徹して作業を続け、何とか間に合わせたのである。
秀吉は、お祭り騒ぎのようにして、やってきた。
見ると、そこらじゅうが松茸だらけ。
「これは見事。」
と、非常に機嫌がよい。
子供のように、はしゃぎながら松茸を採っていた。
すると、傍にいた女性が、秀吉の袖を引いて、
「これは自然に生えたものではありません。
誰かが、植えたものでございます。
殿下にはそれがお分かりになりませんか。」
と、小賢しく言った。
秀吉は、手を振って、さえぎり、
「こら、言うな。俺たちを喜ばせようとして、皆がやったことだ。
これだけ植えるには、相当の苦労があったはずじゃ。
その気持ちを、ありがたく受け取ってやらねばならぬ。」
とニッコリ笑ったと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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