秀吉が太閤と呼ばれていた頃。
当時、秀吉の御伽衆の中に、二徳という者がいた。
かれがいつも調子のいい事を言うのを、
こにくらしく思っていた秀吉は、悪戯をしかけてみた。
二徳を呼び出すと、
「今日は非常に立派な鶴を献上された。これを生き造りにしてお前に食わせてやろう。」
と言う。
そんな気持ちの悪いもの食わされてはたまらない、と思った二徳、
「わたくしは、愛宕権現に願をかけておりますので、
ただいま生ものを食う事ができません。」
と言った。
「なんじゃと?いい加減な事を言うと釜茹でにするぞ?一体何の願をかけておるのじゃ?」
「太閤殿下の事で。」
「わしの?」
「はい。殿下が臆病になられますように、と願をかけております。」
わしを臆病にするとは何事か!
と、言い出しそうな秀吉に二徳は、
「殿下はあまりに命知らずでありまして、
戦場でも鉄砲などにお構いなくどんどん進んでいってしまいます。
もし鉄砲の弾に当たってお果てになられたら、
私はどうしたらいいいのか…。
それゆえに、臆病になられますようにと、精進し権現様に祈っておるのです。」
秀吉はこの答えを気に入り、二徳をほめ、褒美をとらせた。
秀吉の悪戯を見事に切り替えしたお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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