武士の心を知る☆ | げむおた街道をゆく

げむおた街道をゆく

信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

小田原陣が始まった頃の事である。

小早川隆景の家臣に、川多八助、楢崎十兵衛という、

大力無双と呼ばれた武士があった。
 

彼らも主人・隆景に従い、小田原陣に従軍した。

この時、川多は巨大な旗指物、
楢崎は巨大な母衣を掛けて街道を徒歩で進み、沼津までやって来た。

この頃、秀吉も沼津に陣を張っており、遥かに両人の姿を見た秀吉、

「さても大力なる者どもだ。彼らの名を聞いて参れ。」

と、近習を使わした。近習の者馬にて急ぎ彼らに追いつき、

馬上より秀吉の命令を伝え、
その姓名を問いただした。

所がこの二人、使者を無視し、さっさと過ぎ去ってしまった。

そうして近習の者が何度言っても相手にしないので、

しかたがなく秀吉の元に戻りこの事を報告した。

これを聞いた秀吉、近習を大いに叱り付けた。

「お前はきっと、馬から下りずに彼らの名を聞いたのであろう!

無礼至極の振る舞いではないか!
想像するに、彼らもそもそも騎馬の身分であろう。

だが、あの大指物や大母衣を抱えては、馬が疲れることを恐れて、

徒歩にて道を急いでいるに相違無い。

それなのにお前はそうとも考えず、あのような勇士に呼びかけるのに、

事もあろうに馬上から呼びかけたから、彼らは相手にせず行き過ぎたのだ。
もう一度取って返し、下馬して慇懃にその生命を問うて来い!」

そこで近習のもの、赤面しながらその場より取って返し、

彼らに追いついて、秀吉に言われたように、
下馬して慇懃にその姓名を尋ねたところ、案の定彼らも挨拶を返し、

それぞれ自分の姓名を名乗り、
そして悠々とその場を去った、とのことである。」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

こちらもよろしく

→ 太閤記・異聞、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!