奥州岩城より☆ | げむおた街道をゆく

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織田信長の御世の事。

奥州岩城より、その地の小領主、白土摂津、車、久保田という三名のもの、

伊勢参拝に出かけた。
その参拝の帰り、当代の実力者、

織田信長の居城を見物しようと、安土に向った。

その頃、安土では、信長主催の能興行があり、

当代の名の知れた能楽師が皆集まると言うので、
この見物のため大変な人出であったそうだ。

東北から来た三人、宿の主人に案内してもらい、

安土城内に建設された能舞台の、
その楽屋に出入りする人々を見に行った。

「あれは○○様、今出てきたのは○○様。

…あっ、あそこにいらっしゃったのが、

御当家無二の出頭人、羽柴秀吉様です!」
 

「ああ、あれが羽柴殿!我らのような遠国のものでも、

その名は聞き及んでおります。」

だがこの時、秀吉のほうもそのすばしこい目で、彼ら三人を捉えていた

「あの見慣れぬ風情の男達、一見安土の者のようだが、

あの物騒ぐ様子、さてはどこか遠国からきたものだな。」

秀吉、見物の人々を掻き分け、その三人の側に出た。

「お主たち、何所から参られた?」

三人、隠すほどのことでも無いと考え、

「我ら奥州は岩城の、かくかくしかじか、このような者であります。」

とありのままに語れば秀吉、
「なるほど、たまたまここに参られたのか。

いやしかしこれも何かの縁、良ければ今後、
都鄙の遠路に離れても、互いに折に触れて、

音信をしていただけるとありがたい。」

秀吉、貪欲である。

未だ織田政権の影響下には無い東北に、

いち早く知音を作ろうとしたのであろう。
 

この後、岩城に帰った後、他の二人は、遠き地にいる織田家の出頭人と、

音信を取ろうとはしなかったようだが、

白土摂津だけは使者を立て、駿馬一匹を秀吉の元に届けた。


時は流れる。

関白秀吉による奥州仕置き。
白土のことを覚えていた秀吉は、白土に対し、

岩城一郡を下し賜わった、とのことである。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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