美濃国宇留間の城主・大澤二郎左衛門は、
木下秀吉の謀を以って織田信長に属した。
秀吉は大澤を引き連れ信長のもとに参り、
清須において信長へ御礼を申させた。
その夜、信長は密かに秀吉を招いて命じた。
「大澤は名のある勇士である。
もし志を変じては、重ねて退治するのも大儀であれば、
夜中に彼を誅するように。」
秀吉はこれを諌めた。
「大澤大敵なりと雖も、我らを信用したくれた故に、降参を遂げたのです。
今これを殺すことは、約を変じ信を失い、ただ一時快くするだけの話であり、
今後重ねて、所々の剛敵が降伏しなく成るでしょう。」
そう説得したが、信長は得心しなかった。
秀吉は急ぎ大澤の元に行くと、信長の命を残らず説明し、
「こういった事となったが、
あなたは私を人質として、急ぎ退去するのだ。」
これを聞いて大澤は大いに喜び、
秀吉を人質に取って帰城した。
後に秀吉はこの時のことをこう語った。
「私が大澤に信を示した所、大澤は私を以って人質とし、
小刀を抜いて私に指し当てて退いたが、
つまり大澤は信というものを知らなかったのだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!