ある時、矢作橋にて一人の少年が休んでいると、
野武士の一団が通りかかり、その頭が少年の頭を蹴飛ばした。
するとこの少年、
「人の頭を蹴飛ばしておきながら無視するとは何事か!一言詫びろ!」
と、頭を睨み付けた。
そう言われた頭は、この少年の度胸の大きさに感心し、
自分の屋敷に招いた。
「一つ知恵比べをしよう。
3日以内にこの刀(名刀正宗)を奪い取る事が出来たら、お前にやろう。」
「分かりました。受けてたちましょう。」
こうして二人の知恵比べは始まった。
「さてさてあの小僧、どの様な策を使ってくるのか・・・。」
頭は刀のある部屋にて少年を待ち構えた。
一方、少年は屋敷の庭先から、こちらをじっと見張っていた。
「そうか、ワシがここを離れた隙に奪い取る気だな。だが、甘い。
常に刀を持って移動するからな。」
と頭も隙を見せなかった。
そんなこんなで3日目を迎えた。
この日は雨だった。
「結局、あの小僧はワシを見張るだけで何もして来なかったな。
いかに度胸はあっても所詮は子供か。」
と勝ちを確信した。
すると雨がどんどん強くなり、強風も吹いてきた。
しかし少年はその場所から動こうとはしない。
頭も流石に危ないと思ったのか、
「小僧、負けを認めてこちらに来たらどうじゃ。」
と声をかけたが、少年は動かない。
頭が不思議に思い近寄って見ると、
少年だと思っていたそれはなんと傘を持たせた人形だったのだ。
「しまった!騙された!」
とあわてて戻るとそこには、
「賭けは私の勝ちです。約束通り、刀は戴きます。」
刀を持った少年がいたのだった。
結局、頭は負けを認め、刀を少年に渡したという。
その後も2人の交流は続いた。
少年は後の天下人豊臣秀吉、頭はその右腕、蜂須賀正勝となるまで。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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