太閤秀吉の生国は尾張国中村の人であり、
古くは川中島の高坂弾正の所で奉公をし、
それから三河に行って松下嘉兵衛に道で出会った。
秀吉は、長い楊枝をくわえており、嘉兵衛はそれを見て尋ねた。
「その方は牢人であるか?」
「如何にもその通りである。」
「その方は、どうしてそんなに長い楊枝を使っているのだ?」
「牢人であるので何本も楊枝を才覚する金もなく、
長く使えるようにこうしたのだ。」
「なるほど。」
嘉兵衛は再び尋ねた。
「その方は今までどこに居たのか?」
「川中島で、高坂弾正のところに。」
「なんと!弾正殿に直に仕えていたのか!?」
「弾正殿の家来である外記孫八郎の足軽をしておった。
その後、工藤源左衛門の所にも少々居た。」
嘉兵衛はこの者の話を聞いて、
普通ならず利口な者であると思い、彼を召抱えた。
松下嘉兵衛の前に、高坂弾正の元にあったという、
珍しい秀吉に関しての逸話である。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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