醜い事は恥ではない☆ | げむおた街道をゆく

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結城秀康が、病気のため久しく引き込んで養生していたが、

回復したため登城する事となった。

家康も、これを大変喜び、

自らもてなしの用意を仰せ付けるなど、大いに張り切っていた。
 

ところが、
登城当日、事態は急変する。

 

秀康の傍衆に、病後の秀康の様子を尋ねた家康は、
たちまち機嫌を悪くし、

対面を中止、秀康には退出するよう命じた。

秀康の家臣は勿論、

家康の側近まで色々と詫び言をして、

どうにか対面のあるようにと頼み込んだが、

家康の不機嫌は一向に収まらず、

報告を受けた秀康も大いに困惑したが、
とにかく、その日は退出した。

家康が、機嫌を損ねた理由が、誰にも分からなかった。

「秀康様は、大変気にしておられます。どうかご対面を。」

家康の近習たちも皆、そのように頼み込んだが、

家康は、

「一刻も早く会いたいのは、わしとてその通りだ。
だが、先ほどのように勿体をつけて登城するのであれば、

会う事などできようか。」
と、言うばかりであった。

そこで皆は、

「それはどう言う事なのでしょうか?

もう少し詳しくおっしゃっていただければ、
秀康様に、ご意見する事もできます。」

と、言うと、家康はようやく説明を始めた。

「わしは、秀康が今度の病気で、

鼻が変形し見苦しい姿になった、と既に聞いていた。
だが先日の登城の際、

秀康は、貼付薬をつかって鼻の変形を隠していたと言う。

美男を好むなどと言うのは、町人か公家のやる事である。

本来、病気で顔の形が醜くなった事を、
気にする必要など全くない。

人間にはさまざまな病気がある。

目玉の抜けること。

口のゆがむ事。

手足が萎縮するものもある。
だがこれらはすべて病気である。

どんなに見苦しくとも、恥ではない。
 

家康の子であり、一軍を束ねる立場にある秀康が、

鼻の形を気にして貼付薬をつけ、

見栄えを良くするなど、もっての外の汚い心である。

一般に人の上に立つものは、

少しのことでも気をつけなければならない。
もし対面すれば、その鼻を隠した秀康を、

家康は、見てみぬ振りをしたと取られよう。

それは秀康の弱さと取られ、逆に鼻の事をあげつらわれる事になり、

秀康は旗本や家臣たちに侮りを受けるであろう。

そうあってはいけないと思い、対面を止めたのだ。」

その後しばらくして、秀康は貼付薬を付けずに登城した。
 

この時、家康は大変に機嫌が良く、前の支度以上にもてなし、

秘蔵の道具なども多く与えたと言うことである。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ どうする家康・異聞、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!