権現様(徳川家康)、ご若年の頃より、
少しでも馬が歩きずらそうな場所では、
馬より降りて歩いていった。
或る時、近習衆へこの事について仰られた。
「私が道悪しき場所で馬より降りるのは、大坪流極意の一伝であるぞ。
まあ総じて、少し危ういと思うような場所では馬には乗らぬものだ。
もしその身が大身で、乗り換えの馬も引かせているのならともかく、
今一頭の馬を乗り歩いている小身侍などは、
ずいぶん馬の脚をかばうべきだ。
馬に乗れば乗ることばかりを心得、
少しもこれを労る心が無く、その足を損じさせて、
「ここは馬に乗らなければならない。」
という場所で乗れぬようになってしまえば、それは散々のことだ。
よく心得ておくべきだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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