徳川家康が駿府の城にいたある夏、
天にわかに曇り、激しい雷雨となった。
この雷が鳴り響く中、家康はお伽衆たちと広間にいたが、
かれらにこう尋ねた。
「地震などは家を頑丈に作ったりと、まだ用心のしようもあるだろうが、
雷だけはどう用心しても、
何処に落ちるかわからないのだから難を避ける事は難しい。
何か雷を避ける方法はあるか?」
お伽衆たちは頭を悩ませたが、結局皆、上様のおっしゃるとおり、
雷だけは用心の方法ありません。
と、答えた。
ところが家康は、
「いや、雷にも用心の方法はある。」
それはいかに?と問われれば、
「雷が鳴っているときは、広い屋敷でも狭い小屋でも構わん、
親子兄弟、それぞればらばらの場所にいることだ。
そうすれば、一家が全滅する事はない。
雷に当たって、個人が死ぬのは、
それはその本人の運命とあきらめるしかないだろう。
だが、一家が一つところに固まって、そのたった一人の運命に合わせて全滅しては、
愚かとしか言い様が無いではないか。
避けられぬ物への用心は、こうするのだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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