駿府の近くで、神祖が御鷹狩をされていたとき、
道端に、老女が児を連れて泣いていた。
彼女らを御覧になられて、
「何者だ。何故に泣いているのか?」
と御傍に御尋ねさせた。
老女が申すに、
「向こうの村の者ですが、夜前に火を出し家を焼いてしまいましたところ、
御代官から火の元の不注意をしたとのことで、
所払を仰せ付けられました。
よって家を立ち退かされました。
しかし、どこにも心当てが無いのです。」
とのことであった。
そこで、
「火を出した者を、所払いにするのか。
近年、二度城内から火を出したことがあるにもかかわらず、我はどこにも行っていない。
そのことを、代官によく言い聞かせよ。
老女は幸せ者だな。
目にかかったので、不憫に思ったのだ。
老女には、家を作って与えてやれ。」
との仰せがあったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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