家康が、駿河に滞在していた折のこと。
ある夜、ふと表に出ると、夜番の者が、一人しかいないことを発見した。
「他の者はどうしたのだ?」
と聞くと、
一人残った当番は、
「そ、それが、相撲見物に…。」
と、恐る恐る言上した。
さあ家康は、これに怒った。
相撲を見に行った連中ではなく、残った男の方に。
「何でお前は、一人残っておるのだ!」
これに、この男は混乱した。
当然である。
こっちは言いつけを守っているのだ。
「腑抜けか! 臆病か!? 罰を受けるのが怖くて、それで残ったのか?」
実は夜番の者たち、毎夜残る当番を決めて、
それ以外の者たちは遊びに出かけていたのである。
ところがこれ以降、
「残ったものは臆病者。」
という事になり、
誰も、
「自分が残る。」
とは言い出さなくなった。
だからといって全員出て行くわけにも行かず、
自然、夜遊びに行くこともなくなった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!