大坂夏の陣も終わり、家康はいよいよ完全な隠居を決めた。
そこで、かねてより目をつけていた土地に、隠居所を作ろうとし、
その設計を藤堂高虎に頼んだ。
ところが高虎は、渋い顔をしている。
「何か思うところでもあるのか?」
と、家康が尋ねると、
「は…、大御所様の隠居所を設計するのは良いのですが、
これはいつ造られるおつもりで?」
「?、勿論設計図が出来次第、造るつもりだが…。」
「幕府は先の大坂の陣が終わった時、諸大名を休ませるために、
5年間の賦役の停止を宣言しました。
大御所様は、ご自分の手の者だけで、この建築をなさるおつもりでしょうが、
それでも諸大名は、お手伝いを申し込んでくることは間違いありませんし、
中には勝手に、工事に参加するものも出て来るでしょう。
これは幕府の宣言への違反になりますが、
幕府も大御所さまの事として処分も出来ません。
それでは幕府の威令は…。」
「わかったわかった、皆まで言うな。」
こうして、家康は隠居所の建設をあきらめたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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