徳川家の臣に、筧又蔵という男がいた。
彼は長篠の戦いで見事な采配を見せたので信長は非常に感心した。
信長、
「又蔵の指揮はすばらしい。
三河殿は、よき家臣をお持ちのようだ。」
家康、
「いえいえ、あの程度の者なら、我が家中に、ごまんとおりますよ。」
家康は、見栄を張って余計なことを言ってしまった。
又蔵は、家康の言葉を本気にした。
又蔵、
「殿がそのように思っておられたとは心外だ。
拙者のような者がそうそういるものか、拙者は暇を取らせていたたく!」
怒った又蔵は徳川家を飛び出してしまった。
家康は内心、
(あれほどの武将を失うとは、馬鹿なこと言ってしまった…。)
と悔やんでいたのだが、意地を張って、また余計なことを言ってしまった。
家康、
「あのような者は、日本中の誰もが、相手にしてはいかんのだ。」
これを知った又蔵は、また本気にしてしまう。
又蔵、
「そこまで低く思っておられたのか…。
こうなれば日本を出て、外国にでも行くとしよう。」
とうとう朝鮮半島に渡ってしまった又蔵は、
そこで朝鮮軍が外国の軍隊と戦って負けるのを見た。
又蔵、
「ふん、拙者が采配を執れば、あのような負け方はしない。」
又蔵がこのように言っていることを知った朝鮮国王が、
又蔵に兵を与えてみると、又蔵は日本の戦術を兵たちに教えて、
敵軍を負かしたという。
張らんでもいい意地で、有能な家臣を失った、頑固者の家康であった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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