ある時、謙信は使い番に欠員ができたので、
神保主殿という17歳の若者を新たに使い番とした。
が、すでに使い番として仕えていた者たちには、それなりの自負があったのか、
「こんな右も左も分からんような小僧を、我らと同列にするとは。」
と、内心面白くなかったようである。
これを知った謙信は、使い番の者たちを呼び出してこう言った。
「使い番といえば、わしの目とも片腕とも呼べるものでなければならん。
よって、十分吟味した上でおまえたちを使い番に命じたわけだ。
それで、新たな使い番のことだがな。
新たな者を選ぶにあたって以前武役を務めたものが適任かと思ったが、
中途半端な者を選べばかえっておまえたちの気分を害するかもしれぬ。
そこで、全く経験の無い神保をわしの眼力を頼りに選んだのだ。
おまえたちならしっかりと使い番として教育してくれると思ってな。」
その後、神保主殿は加賀尾山の城攻めで功を上げ、謙信から感状を賜ったという。
神保の才を見抜いた謙信、彼を一人前に育て上げた使い番仲間、
そして両者の期待に応えた一人の若者の話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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