上杉謙信の家臣に、廉将監と言う者がいた。
ある時、この将監の嫡子、甚四郎が罪を得、死罪にされた。
謙信は将監の元に使いを出し、甚四郎の罪を詳しく説明し、
父母への憐れみまで表明した。
将監は、一旦は君命を畏まり、奥へと下がった。
が、再び戻って来ると、長刀を構えて使者に立ちふさがった。
「私は謙信公にも、そしてもちろん、使者であるあなた方にも恨みは無い!
ただ、子を思う心が私を狂わせたのだ!」
そのように叫ぶとたちまち、二人の使者を切り伏せた。
この騒ぎに、近隣の者達が集まり謙信の使者を殺した廉家を攻撃、
将監と手向かいした廉家の者達は皆殺しにされたが、
攻め手にも30名の死傷者が出るという大きな惨事となった。
が、この報告を受けた謙信は、怒る事は無かった。
「ただ一人の男子を失って、気がふれてしまったのか。不憫なことではないか。」
そうして、残された廉の妻と娘を厚く扶助した。
時の人は、この謙信の仁心を、深くたたえたと言うことである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!