いやあ~待ってたんだ、待ってたんだ!!
京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズの新作!
なんたって17年ぶりだよ?
京極さんが「お待たせしすぎたかもしれません」って、カメラ抱えてパンイチで出てきてくれてもいいくらいだよ
その新作がこの『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』
表紙中央に描かれた、よくわからない生き物が「鵼(ぬえ)」という妖怪です。
この百鬼夜行シリーズは毎回、ある妖怪がテーマになるミステリなんですけど、今回は鵼。
鵼は、頭が猿、手足が虎、胴体がタヌキ、シッポがヘビというよくわからない化け物なんですが、今回起きた事件の方も、実態があるようでないような、猿、虎、ヘビなどいろいろな謎がもつれて複雑怪奇になってしまったような、よくわからない一件でした。
あらすじはこちら
舞台は戦後まもなくの日光。
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。
妖光に翻弄される学僧。
失踪者を追い求める探偵。
死者の声を聞くために訪れた女。
そして見え隠れする公安の影。
発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆・京極堂は、縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。
・・・なんのこっちゃ?って思いますよね
いや、このシリーズのあらすじを書くのは容易なことじゃないんですよ。
今回はとくに。
だから出版社もこう書くしかなかったんだと思う。
私は、最初の『姑獲鳥(うぶめ)の夏』を読んで以来、このシリーズの大ファンなんですが、万人受けする小説では絶対にないと思う。
なのにずっと人気があるんだから、すごいやね。
なんたって、毎回めっちゃくちゃ物語が長いんだもん
今回なんて2段組で800p以上あるんだよ
凶器になる厚みだよ
そして毎回おなじみの、主人公・・・いや探偵役・・・いや謎を解く役の古書店主・京極堂が語るうんちくが、長い!難しい!面倒臭い!!
内容が宗教だの、神さまの系譜だの、生物学だのなんで、ココで脱落する人、絶対に多いはず。
でも、私はむしろソコが面白かったんだ
そしてね、ソコを乗り越え、頑張ってコツコツ読み続けると、京極堂によって網が引き絞られたかのように、いくつもの謎が1点に集約され、「うわっ!そうなるんだ!」という意外かつ驚きの結末がまっているんですよ!
長~いフリから一撃必殺のオチに至る漫才を見るような、このオチのスッキリ感がクセになるし快楽なの
もうひとつの魅力が、レギュラー登場人物たちのキャラの濃さ!!
このシリーズは、序盤でレギュラー陣がそれぞれ不思議な事件に遭遇する、ってのがお決まりのパターン。
一見まったく関係ないように見えたそれぞれの事件が、じつはつながっていて、京極堂によってその結びつきが解かれると、とんでもないカオの、とんでもない大事件に発展するわけですよ
で、このレギュラー陣なんですが、数が多い!
10人以上いる!←毎回全員が登場するわけではないですが
なのに、全員ひとクセもふたクセもあって、とにかく個性が強い。
私のいちばんのお気に入りは、探偵の榎木津さん
え?探偵は京極堂じゃないのかって?
いや、京極堂は探偵役なだけの古書店主かつ拝み屋かつ神主なだけで、「探偵」はこの人なの。
でも、この人は事件を「解決」はしないの。
引っかき回すだけで。
これまた、なんのこっちゃだよね?
でも私、強烈キャラのレギュラー陣内でももっとも個性が強く、オツムがどうかしているんではないかと思うほど理解不能な榎木津さんに会うためにこのシリーズを読んでいる、といっても過言ではないほど大大大好きなのよ
今回出番が少なくて悲しかったけど幼なじみの木場刑事との罵詈雑言のやりとり(これまた大好き
)が楽しめたからまあよしとしよう。
とにかく、17年たってもぜんぜん変わらない(当たり前だが)レギュラー陣とまた会えて、同窓会気分に浸った私を、充分満足させてくれる1冊でした。
800p、引き込まれて読みました
これからもぜひぜひ続編を期待したいです!!
でも、京極センセ、次作はせめて2年後くらいにはヨロです🙏
そしてこの本、私は大好きだけどみなさまにはとくにオススメはしませんよ。
読んだらクセになる濃い~~魅力がわかってもらえると思うけど、読むの、マジたいへんだからね