高級を知らない | TERUのブログ

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つれづれに

昨日は、ドイツの高級車が二酸化炭素の排出規制に苦しんでるって話を書きました。

で、書いてて思ったんですよ。日本は自動車大国じゃないですか。トヨタはGMと世界の1位、2位を争っているし、ホンダと日産も、世界的に見て、けっして小さな会社ではない。

なのに、日本って高級車がないですよね。

いや、「ない」と言ったら間違いだな。トヨタはレクサスという高級車部門を持っていて、お高いのになると、軽く1千万円を超えるわけですからね。

でも、あえて「ない」と言いたいんですよ。

というのは、日本の高級車は、世界的にみて、決してブランド力が高いとは言えないからです。ベンツやBMW、あるいはポルシェのように、ドイツにはすごい高級車メーカーがたくさんあるのに、なんで日本にはないのか?

「一億総中流」とか、自分たちで言っちゃう国民ですから、「中流」しか作れないんでしょうか。あるいは、日本人のDNAには「もったいない遺伝子」が組み込まれていて、高級車なんてもったいないモノは作れない宿命なんでしょうか?

というのは、半分冗談ですが、半分は本気です。日本には「もったいない」文化があるのは事実だと思うのです。昨日話題にした、二酸化炭素を回収するアウディのやり方に首をひねりたくなるのも、それが社会正義と言うより、高級車を乗り回すためだと思っちゃうからですよ。そう思っちゃうところが、たぶん日本人なんだろうな。

だいたい日本には、一流より二流を好むというか、二流に甘んじるほうが楽ちんと感じる風土もありますよね。出る杭は打たれるから、出ないようにするわけですな。

中小企業の社長さんなんか、取引先に行くのにベンツじゃ偉そうに見えちゃうから、わざわざクラウンを買うなんて話もあるらしいし(ホントかどうか知らないけど)、そんなこと言ってたら、そりゃ高級車なんて作れませんよね。

クラウンは、立派な高級車だ!

という意見もございましょうが、トヨタ自身がかつて「いつかはクラウン」なんて宣伝していた通り、ふつうの人がいつか買えるところにあるのが、クラウンのいいところなんですよ。つまり、手の届かない高嶺の花ではない。

そーいえば、同じ自動車大国のフランスも、高級車が下手ですね。彼らも、かつては大型の高級車も作っていたけど、いまはほとんど絶滅状態。大衆車と、やや高級な(日本で言えばクラウン的な)車しかない。

不思議ですね。日本とフランス。文化が真逆って気がする2つの国で、ともに高級車を作るのが下手なのは、なんでなんでしょう?

もしかして、高級車と文化は関係ない?

いやいや、そんなことはありませんよ。イギリスを見ればよくわかる。

もー、あの人たちは高級を知り尽くしてるって言うか、高級を作り出してきた張本人というか、すごいもんですよ。ロールス・ロイスにベントレー。007御用達のアストンマーチン。さらに砂漠のロールス・ロイスと呼ばれるレンジローバー。どれもこれも、貴族のための貴族の車ですよ。まさしく高級の代名詞。もう、これ以上はない高級車。

もっとも、ロールス・ロイスはBMWに、ベントレーはフォルクスワーゲンに、レンジローバーに至っては、かつて植民地だったインドのタタに買収されちゃいましたけど。

考えてみると、ドイツのメーカーが、イギリスのメーカーを買い漁ったのは、本当の高級車を作るセンスが欲しかったからかもしれませんね。

もう一つ、忘れちゃいけないのがイタリアです。

イタリアにもありますよね、高級車。フェラーリにマセラティ。そしてランボルギーニ。これらはみな、高嶺の花です。

イタリアって国はおもしろくて、フェラーリのようなスーパーカーを作るのがうまいかと思えば、フィアットのように、小型の大衆車を作るのもうまいんですよね。でも、ミドルクラス(中流向け)の車が下手なんだな。大げさに言うと、安いのと高いのしかない国です。そのせいかどうか知りませんが、イタリアでは新車販売の7割が輸入車だそうですよ。イタリア人はイタリア車を買わないのだ(苦笑)。

あとはアメリカか。アメリカの高級車と言えばキャデラック。これも……うーん。どうなんだろう。キャデラックファンに怒られるのを承知で言うと、母国のアメリカでは、日本人がクラウンに感じる高級感程度じゃないですかね。よくわかんないけど。

要するに、アメリカも高級車を作るのは得意じゃない。まあ、あの国はでかいトラック作ってればよかったんで、しょうがないと思いますが。

で、ですね。

いったい、なにが言いたいかと言いますと、これからは「高級」を作れなきゃダメなんじゃないかと、ぼくは、ずーっと思っているのです。

車に限らず、カメラやレンズもそうだし、家電だってそうです。日本にしかない高級なブランドが絶対に必要です。韓国や中国の躍進を見ていると、つくづくそう思います。お買い得品を作っていても、負けちゃいますよ。

もちろん、中期的には、いままで通りお買い得な品も、どんどん開発しないとイギリスみたいになっちゃいますから、難しいところではありますが、長期的にはコモディティ化(汎用品化)した製品は、絶対に新興国には勝てないと思います。日本の人口は、どんどん減少していきますから、このまま行けば2050年くらいには労働人口が約半分になる。

そのときまでに、日本は高級ブランドを作る国になっている必要があります。もったいないオバケに怯えながら(苦笑)、日本人は高級品を作るべきです。

あ、そう言えば思い出した。ドイツでは、べつにお金持ちってわけじゃないふつうの人も、ちょっと無理してベンツを買うそうですよ。母国ですから、日本で買うより安いというのもあるのでしょうが、高級は伊達じゃなくて、壊れずに長く乗れるから、トータルで見ると、高い買い物ではないんだそうです。

高級品には、そういう考え方もあるわけですよね。