ワープロ脳 | TERUのブログ

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つれづれに

正月休み。伯母と漢詩の話になりましてね。自慢じゃありませんが、わたくし漢詩に関しては、ほとんどなにも存じ上げませんので(ホントに自慢じゃないな)、ふんふん、へいへいと適当に相づちを打つしかできなかったんですけど、伯母も、甥の脳レベルに気づいたのか、話題が、人間「書かなきゃダメね」って話に変わって、それはもう、わたくしも大いに賛同するところなのであります。

見たモノを写真のように記憶できてしまう特殊な能力を持った人もいるらしいですけど、ふつうの人はそーいうわけにはいかない。なにかを覚えようと思ったら、紙にペンで書かないと、なかなか脳に記憶が定着しないんですな。不思議ですね。

なんてことを話したあと、ふと思ったんですよ。

むかしは、原稿用紙に1行ずつ、頭から順番に書いていったわけですよね。手紙や、このブログくらいの長さの文章なら、それで問題はありませんけど、もっと長い文章、たとえば小説のようなのも、むかしはそうやって書いていたわけですよね、作家のみなさん。

すごいなあと思うわけです。

だって、1行ずつ書いて、それを積み上げていくってことは、頭の中に明確な全体像が入っていないと、物語の最初と最後で、齟齬をきたす可能性が大きいじゃないですか。だから、文豪には、原稿用紙を何枚も破っては捨てるというイメージがあるのかもしれないけど(笑)。

コンピューターで言えば、インタプリタですよ。1行ずつコードを解釈しながら実行するプログラム。インタプリタが機能するのは、プログラムが完成しているからこそですよね。小説なら、頭の中に完成した小説があって、それを1行ずつ書き写すというのなら、インタプリタでも問題ない。

でも、そんなの不可能ですよ。横溝正史は、あの、おどろおどろしい人間関係と巧妙なトリックを、すべて頭の中だけで処理して(メモをいっさい取らなかったそうです)、インタプリタで小説を書いていたようですが、横溝正史のような天才なら、できるんでしょうけど、ぼくには、絶対に無理です。

しかし! 天はわれに味方したのだ。この世にワープロというモノをお作りになった。

ぼくが社会人になる前に、すでにワープロ専用機という機械が発明されていて、しかも最初に勤めた事務所には、ワープロ専用機があったので(後にはお高いMacも導入された)、社会人第1日目から、手書きでなにかを書く必要はなかったのです。

それから数年して、文章を本格的に書くようになったときには、パソコンを使うのが当たり前だったんですな。そのころにはもう、ワープロ専用機が廃れていて、パソコンの時代でした。パソコンは、文章の移動やコピーなど朝飯前。しかもワープロ専用機とは違って、何万行もある長い文章でも、あっという間に処理できる。(いまでは信じられないことですが、ワープロ専用機は、原稿用換算でせいぜい数百枚分程度しか処理できなかった)

それが当たり前の環境の中でしか、文章を書いてこなかったんで、わたくし、頭の構造が完全にワープロ脳になっております。

たとえばいま、原稿用紙で1000枚分の物語を書くとしましょう。当然書き出す前に、どんな物語にするか考えますよね。こんな世界で、あんなことが起こって、こんな人たちが動き回って、最後はハッピーエンドがいいよね。なんて具合に。

だいたい思い描いたところで(だいたいですよ。完ぺきなイメージではなく)、多くの場合、ラストから書くんです。もうね、最初に物語のクライマックスを書いちゃう(笑)。

これ、わりといい方法だと思ってるんですよ。だって、終わりを先に書いちゃえば、それに向かって書いていけばいいわけで、物語の内容にブレが少なくなると思うんです。

しかも、ラストを最初に書いたあとは、物語の中で、盛り上がって楽しそうな部分を書いちゃって、さらに、登場人物たちの関係が深まるエピソードなんかを、どこに組み込むかはあとで考えることにして、とりあえず書いちゃう。

という具合に、もうほとんどバラバラ。箱から出したばかりのジグソーパズル状態ですよ(笑)。

それを最後に、くっつけていって、足りないところがあれば書き足すし、全体がだいたいできたところでも、まだ、いくつかの章を組み替えてみたりなんてこともします。

ですからね。最初に書いた通り、原稿用紙に、最初から1行ずつ書くなんて、ぼくには考えられないし、実際に書けません。ぼくの頭はインタプリタにはできてないのだ。

言っときますけど、ワープロ的に書けば、うまく書けるとか、早く書けるとか、そーいうことではぜんぜんありませんよ。ただ、ぼくはそう言うやり方でしか書けないってだけのことです。パソコン使うだけで傑作が書けるなら、ノートPC持って家出なんかしないですよ、ホントに(苦笑)。

まあ、それはそうと。

パソコンが普及して、もうずいぶん経ちますから、ぼくみたいなワープロ脳になっている人が多いと思うんですけど、どーなんでしょうね?

彼女には、「あなたの頭の中ってどーなってるの?」と言われちゃうので、そんなに多くないのかなあ?

うーむ。