『SIGMA』というレンズ・カメラメーカーがあるんです。日本にですよ。
調べてみたら、1961年に創業の、比較的若い会社です。創業者は、山木道広という方で、いまは息子さんが社長を継いでます。
もともとは、テレコンという写真用レンズのアダプターを製造販売する会社だったそうですが、徐々に、写真用のレンズを作るレンズメーカーになっていきました。会津に工場も建てて、ついには、カメラ本体も開発しましてね。いまでは、完全にカメラメーカーと呼べる会社です。
でも、やっぱり、SIGMAといえば、レンズなんですよねえ。
じつはぼくも、SIGMAの17-70mmと、10-24mmのユーザーなんですが、これ、2本ともすごく便利で重宝しています。
で、ですね。このSIGMAさんが、このほど、「35mm F1.4 DG HSM」という高級なレンズを開発しまして、今月の30日から売り出すそうです。
人事ながら(ほんとに人事だわさ)、なんだか、うれしくってねえ。
なぜ、うれしいかというと、SIGMAに限らず、日本のレンズメーカーって、「安いレンズを作る会社」というイメージが強かったんですよ。
高級なレンズは、ドイツのメーカーの独擅場だったんです。ツアイスとか、シュナイダーとか。写真好きには、いまもため息が出るレンズは、ほぼドイツ製ですね。(ただし製造は日本がしてたりするんですが)
SIGMAは、それじゃイカンと思ったらしくて、ここ数年、高級レンズの開発に意欲的でして、いくつか高級レンズを開発しいます。
でも、あと一歩、なにかが足りないって思っていたんですが……
今回発表された「35mm F1.4 DG HSM」を見て、いままで、なにが足りなかったのか、ハッキリとわかりました。
それはレンズのデザインです。
今度のレンズは、デザインが素晴らしい!
希望小売価格が、 118,000円もするレンズですから、写りが良くて当たり前なんだけど(まだテストデータは見てないですが)、日本のレンズ専業メーカーのレンズって、レンズの見た目(外観デザイン)がダサいんですよ。
そこでSIGMAさん、ついに、社内でデザインするのをやめて、外国のデザイナーに、レンズの外観デザインをお願いしたそうです。(内部のレンズ設計は、もちろん日本の技術者ですよ)
それが大成功です。
やっぱ、デザインは大事だわー。
こんどのSIGMAのレンズは、その製品写真を見てるだけで、もう、うっとりするほど「美しい」のです。
興味のある方は、SIGMAの『製品情報』を見てくださいな。
ぼくは常々、カメラ用レンズの世界で、日本にもツアイスに並び称される、高級レンズメーカーがあったらいいなあと思っていました。
新興国の追い上げで、なにもかもが、安く作られる時代にあって、日本は、本当に心から欲しいと思わせる「高級品」を作れる国にならなきゃイカンと思うのです。よく家電メーカーが言う「付加価値」じゃなくて、もっと精神に作用する「高級品」をです。
機能的に「あれができる」「これができる」なんてのは、もうそんなに重要じゃない。
ため息や、よだれが出そうなほど、美しい製品。
ぼくらが欲しいのは、そういうものだと思います。機能としての付加価値なんてものは、すぐに「節約」の対象になりますよ。そんな機能いらないよって言われたら終わり。(むしろ節約が楽しい)
ですが、手にしたときの、うっとりするような質感や、見た目の美しさには抗えません。それこそが、所有するよろこびにつながると思うのです。
考えてみれば、アップルがそれで成功してるわけですもんね。できることはWindowsパソコンと似たり寄ったりなのに、物としての美しさが、まるで違うじゃないですか。同じ手法は、カメラのレンズはもちろん、カメラ本体にも通用しますよ。
というわけで、SIGMAという、ぼく自身が好きな日本のレンズメーカーが、やっと本物の「高級レンズメーカー」への道を歩み始めたことが、うれしくしてしかたないのです。
がんばってくださいね、山木社長!
お会いしたことはないけど(笑)。