あ、非通知って、番号非通知ことね。NTTのナンバーディスプレイってやつですよ。
なにも設定しないと、相手に自分の電話番号が知らされる「通知」になってるから、「非通知」でかけてくる人って、なにかの理由で「番号を隠したい」人だよね。
うちの電話機は、非通知の場合は、鳴らないようにしてます。で、相手には「番号通知で掛け直してちょーだい」とアナウンスが流れる。
だから、電話の鳴る音に悩まされることも、変な人の電話に出る危険もないのだけど、着信があると、赤いランプがつくので、非通知があったことはわかるわけです。
それが、今年に入って、もう五、六回あるんですよねー。
この非通知電話。もし出たら、オレオレ詐欺だったりするんでしょうかねえ?
非通知は論外としても、勧誘や宣伝の電話が多すぎるので、ふだんは留守電に設定してます。知り合いは、電話帳に、片っ端から登録してあるので名前が出ます。名前が出てれば、留守電に切り替わる前に受話器を取ります。そうじゃないときは、そのまま留守電に対応させる。
とくに仕事部屋の電話は、勧誘なんかで時間を取られたくないので、知らない番号には絶対出ない。
その代わり、仕事部屋の留守電は、電話機に入っている既存の対応メッセージじゃなくて、ちゃんと、ぼくの声で録音してあります。こちらの名前も、ハッキリと伝えて、相手が「この電話番号であってるかしら?」と不安にならないように。
これなら、知らない方でも、本当にぼくに用事があるなら、留守電に録音してくれるはずです。たとえば、「なになに書店ですが、ご注文の本が届きました」とかね。
でも、留守電に切り替わったとたん、たいていプツンと切れますね(笑)。
それだけ、勧誘が多いってことですが……
もう、ずいぶん前のことなんですけど、ある日、仕事から戻ると、仕事部屋の留守電に、ご年配と思われる女性の声で、録音が入っていました。
「もしもし、山田さん? わたし、花子ですけど、お電話をもらえないかしら。お願いします」
間違い電話なのは明らかですが、留守電メッセージで、ハッキリぼくの名前を伝えているのに、なんで間違い電話が録音されちゃったんでしょう?
謎です。でもまあ、電話があってから、もう数時間経過していたので、山田さんと花子さんの問題は解決済みであろうと思って、この謎は忘れることにしました。
ところが……
翌日も同じ電話がかかってきたんです。
「もしもし、花子ですけど。山田さん、電話ください。困ってるんです。何時でもいいですから……」
その女性の声は、本当に困っていらっしゃる様子。
こうなると、自分が間違い電話をしていることに気づいていらっしゃらないのが、大問題です。花子さんの問題がなにか存じ上げませんが、わたしの留守電のせいで、山田さんと連絡が取れず、問題が解決しないと思うと、すごーく、気になるじゃないですか!
じつは、前日の電話もそうなんですが、外出中の、ぼくの携帯電話に録音内容が転送されるように設定をしています。でも、外出中はどうしようもない。
幸い、この日は、間違い電話の録音があってから一時間以内に、仕事部屋に戻れたので、思い切って、その間違い電話の主である、花子さんへ電話をかけました。番号通知でかけてきているので、リダイアルできるのです。
「もしもし、花子さんですか?」
『そうですけど……どちらさま?』
花子さん、知らない男からの電話に、すごーく不審そうな声です(苦笑)。こっちこそ、あなたのことを知らないよと言ってやりたいですが、そこはぐっと我慢して――
「わたくし、TERUと申します。一時間ほど前に、花子さんからお電話をいただきました」
『はあ? あなたなに言ってるの? わたし電話なんてしてません』
花子さんの声は、いよいよ不安そうな声になりました。犯罪者と思われている気分(苦笑)。
「山田さんに電話なさったでしょ? でも、留守電だったから、メッセージを残したはずです。ところが、その電話は、電話番号を間違えて、べつの家に、つまり、ぼくのうちにおかけになったんです」
『な、なに? あ、あなた……なんで山田さんを知ってるの?』
おーい! 大丈夫か、このオバチャン! 留守電に録音したことすら忘れてるのか!
「いや、だから……」
ぼくは、どう説明したらいいか、数秒考えてから言いました。
「あなたは、電話番号を間違えて、うちにおかけになったんです。それで、うちの留守番電話に、山田さんに、電話をくださいと、困ってらっしゃる様子で録音していらしたので、間違い電話だとお伝えしたくて、この電話を差し上げています」
『は、はあ……そうなんですか?』
花子さんは、まだキツネにつままれたような顔……いや、顔は見えないけど、そういう声です。どうも、ぼくの言ってることを完全には理解してないみたい。
おそらく、ナンバーディスプレイをご存じなくて、見ず知らずのぼくが、花子さんの電話番号を知っているのを、不審に思っているのでしょう。しかし、この世知辛い世の中、ナンバーディスプレイを説明したところで、見ず知らずの男の言葉を信じるとも思えないので、花子さんもご存じの事実だけに絞ってお聞きしました。
「うちの留守電は、ハッキリTERUですと、ぼくの名前を伝えていますが、なぜ、間違い電話に気づかれずに、録音なさったんですか?」
『はあ……わたし、耳が遠いんです』
ギャフン。
こうして、直接電話していると、会話が成立しているので(してるよね?)、聞き取れるようですが、録音メッセージは聞き取りにくいのでしょう(たぶん)。
「そ、そうでしたか。謎が解けました。ともかく、ぼくは山田ではないので、もう一度、よく電話番号をお確かめになってください」
『はあ、そうですか』
花子さんは、まだイタズラ電話だと思っているのか、最後まで、不審そうな声でした。
正直言って、わざわざ電話してる自分が、バカなお人好しに思えてきたけど、そのあと花子さんからの間違い電話はなくなったので、彼女の問題は解決したのでしょう。
めでたし、めでたし。ということでいいよね?(笑)。
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うん、めでたいねー♪
ノンちゃん、それ、なんか違う気がする(苦笑)。