昨日、2018年元旦の「年頭所感」で、こう書きました。
「昨年は後半期より株価上昇の傾向が顕著になり、同時にデフレ脱却と景気回復の兆しがはっきりと見えて来ました。
それ自体は、人々にとっても良い傾向というべきです」。
この見方ですが、まず2017年の物価上昇率は1%に満たず、きわめて小幅にとどまっています。
安倍政権が予定している生活保護基準引き下げや2019年消費税増税などの一連の緊縮政策が行なわれれば、デフレ脱却は吹き飛んでしまい、不況への逆戻りが予想されます。
京都大学大学院教授、内閣官房参与の藤井聡さんは、経済予測について悲観的な見方をしています。
【藤井聡】2018年最大の争点は「プライマリーバランス」問題です。
https://38news.jp/economy/11481
上記ブログのなかで藤井聡さんはこう書いています。
「残念な事に翌年2019年には10%消費増税や働き方改革による大規模な残業代カットのために、間違い無く経済が停滞する見通しです。ですから2018年は衰退を食い止めるだけでなく、「2019年を乗り越えるために、勢いよく上向かせておく」必要があるのです」。
「もし、このプライマリーバランス規律が抜本的に修正されず、ただ単に黒字化達成を2,3年延期する、というだけの話となれば───我が国にはもう、絶望しか残らないことになります」。
私も、財務省やマスコミがしきりに主張する「プライマリーバランス黒字化」によって経済政策に手かせ足かせをはめて緊縮財政を取ることは間違いだと思います。
それは、「プライマリーバランス黒字化」による緊縮財政は、かえって財政を悪化させるだけであるばかりか、不況地獄を生み出すだけでしょう。
欧州債務危機に陥ったギリシアの場合、緊縮財政を取ったところ、かえって財政が悪化したことから、IMFが緊縮政策から方針転換をするきっかけとなっています。
またアメリカのリベラル派経済学者ジョセフ・E・スティグリッツの『スティグリッツ教授の経済教室』(ダイアモンド社)には、こう書かれています。
「アルゼンチンが回復したのは、何よりもIMFの教えに従うのをやめて、巨額の債務を放り出し、通貨の価値を下落させたからだった。あとには四年間の八%成長が続いた。究極の皮肉は、IMFの教えを捨てたら、アルゼンチンは財政規律の回復—IMFが達成しようとして果たせなかった目標—まで達成できたことだった」。(4〜5ページ)。
通貨価値の下落とは、具体的には書かれていませんが、通常は中央銀行による買いオペ(中央銀行が市場から公債などを買い入れて資金を市場に供給すること)や紙幣増刷などの金融緩和策によってマネーサプライ(貨幣供給量)を増やすことを意味します。
そして通貨価値の下落は、つまりインフレを起こすことも意味します。
そして本来、野党とくに左派系野党がこういう批判をしなければならないのですが、なぜか日本では野党が揃って「プライマリーバランス」を自民党に要求する、自民党以上の財政規律論者ばかりというお寒い状況です。
もっと詳しく書きます。
まず、アベノミクス三本の矢(第一の矢「金融緩和」、第二の矢「財政出動」、第三の矢「成長戦略」)は、本来は左派が主張すべき経済政策です。
安倍政権は、金融緩和は日銀が行っており、財政出動は2014年度までは大規模に行っていましたが、それ以降は収縮し、2016年度に増やしたことで景気回復につながっているという状況にすぎません。そして成長戦略は、ホワイトカラー・エグゼンプションや裁量労働制の合法化などの労働基準法改定が含まれており、新自由主義的な「労働市場の規制緩和」という性格を持っています。
それに加えて、「プライマリーバランス黒字化」というイデオロギーやそれを強固に体現する財務省の圧力などもあり、生活保護基準引き下げや2019年消費税増税などの一連の緊縮政策が行われようとしているという状況にあります。
そう考えれば、左派は金融緩和と財政出動は、アベノミクス以上に大規模にやると主張すべきで、緩和マネーを社会福祉財源に使う、あるいは教育や保育、介護職の実質賃金を引き上げて雇用を生み出し、同時に待機児童や介護離職を食い止めて人々の就労を促すことで就労人口を確保して成長につながるという経済政策を打ち出すべきです。
そして安倍政権が掲げる成長戦略の中に新自由主義的な「労働市場の規制緩和」が含まれていることや、デフレ脱却や成長戦略に逆行する一連の緊縮政策を批判すべきです。
この問題に対しては、はっきりと与野党対立や「野党共闘」なる幻想への回収を捨てて、自立した思考や活動しかないと思います。