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過去を悔やみ、

未来を恐れていたら、

今を生きられなかった

「変えることのできない過去や、

不確かな未来のために、

確かな今を犠牲にしてはいけない」

― 中村天風 ―

 

 

この言葉に最初に出会ったとき、

私は正直、反発しました。

 

「何を綺麗事を言ってるんだ」と。

 

そう思うのも、

無理はなかったと思っています。

当時の私には、

悔やまずにはいられない「過去」と、

恐れずにはいられない「未来」が、

どっさりと積み重なっていたからです。

 

 

 

大学時代、合気道の練習中に

頸椎亜脱臼という大怪我をしました。

 

その後遺症は、じわじわと

私の人生に影を落とし続けました。

 

思うように体が動かない。

 

痛みが続く。

 

やりたい仕事を続けられない。

 

転職を余儀なくされ、

収入が不安定になり、

気づけば借金が500万円に膨らんでいた。

 

息子は非行に走り、鑑別所に入った。

 

妻とは5年以上、

まともに口もきかなかった。

 

あの頃の私の頭の中は、

いつも同じ思いで一杯になっていて、

それがグルグルと巡っていました。

 

「あの日、あの練習がなければ」

「あのとき転職さえしなければ」

「これから先、どうなってしまうんだろう」

「老後の金なんて、とてもじゃないが無理や」

 

過去への後悔と、未来への不安。

 

その二つに挟まれて、今日という日が、

ただ苦しいだけの一日になっていたんです。

 

だから、何も楽しくなかった。

 

笑えなかった。

 

感謝なんて、できるはずもなかった。

 

 

 

 

天風先生の言葉と出会ったのは、

そんな頃のことでした。

 

でも最初は、素直に受け取れなかった。

 

「確かな今を生きろ」と言われても、

今が一番しんどいのに、

どうしろというんだ、という気持ちでした。

 

 

それでも、やってみたんです。

形だけでいいから、と。

 

鏡の前で笑顔を作る。

 

今日食事ができたことに「ありがとう」と言う。

 

しんどくても、

今日一日だけ、怒らずにいてみる。

 

最初は、全部「演技」でした。

 

気持ちなんて、

これっぽっちもこもっていなかった。

 

でも、続けていると、

不思議なことが起き始めました。

 

過去のことを考える時間が、

少しずつ減っていった。

 

未来への恐怖が、少しずつ薄れていった。

 

そして気づいたら、今日という一日の中に、

小さいけれど確かな

「良かったこと」が見えるようになっていた。

 

 

 

 

「変えることのできない過去や、

 不確かな未来のために、

 確かな今を

 犠牲にしてはいけない」

 

この言葉の本当の意味が、

体でわかった瞬間がありました。

 

過去は、もう変えられない。

 

頸椎の怪我も、借金も、息子との断絶も、

全部もう起きてしまったことです。

 

未来は、誰にもわからない。

 

どんなに心配しても、

明日何が起きるかは誰も知らない。

 

でも、今日この瞬間だけは、確かに「ある」。

 

その「今」をどう使うかは、自分で選べる。

 

過去を悔やむために使うのか、

未来を恐れるために使うのか、

それとも今日という一日を、

できる限り前向きに生きるために使うのか。

 

天風先生が言いたかったのは、

そういうことだったんだと思います。

 

 

 

 

今、65歳を目前にした私は、孫が3人いて、

毎週日曜日に妻と

外食ランチができるようになりました。

 

借金も完済しました。

 

息子も、数日前、あんずが危ないと知らせると、

夜の11時に駆けつけてきてくれました。

 

あの頃、

過去と未来の間で立ち往生していた私には、

想像もできなかった景色です。

 

変えられなかった過去も、

恐れ続けた未来も、

結局は

「今をどう生きるか」

の積み重ねが、

少しずつ塗り替えてくれたんだと思っています。

 

今日という一日を、大切に真剣に生きる!!

 

それだけで、人生は変わっていきます。

 

感謝。

 

 

 

 

 

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今朝、午前6時30分。

 

私たちの家族として

16年間をともに過ごした、

ミニチュアダックスフンドの

「あんず」が、静かに天に召されました。

 

 

あんずが家に来たのは、

今から16年前のことです。

 

小さな体で、

いつもちょこちょこと歩き回って、

気がつけば誰かの足元にいる。

そんな子でした。

 

特別なことは何もしない。

 

吠えて守るわけでも、

芸を披露するわけでもない。

 

ただ、そっと傍にいてくれる。

 

それがあんずという存在でした。

 

 

あの頃、息子が

家の中で暴れていた時期があります。

 

家の中の空気が張り詰めて、

どこにも逃げ場がないような、

息苦しい時間。

 

そんな時、

あんずはそっと陰に隠れながら、

嵐が過ぎるのをじっと待っていました。

 

そして、長男が少し落ち着きかけた

その瞬間を見計らって、

静かに近づいていき、

傍に寄り添ってあげてくれていました。

 

あの小さな温もりに、
長男、そして家族がどれだけ救われたか。

 

言葉では言い表せません。

 

 

 

昨晩、あんずが危ない

という知らせをLINEで長男に送ると、
仕事を終えた夜の11時ごろ、
駆けつけてきてくれました。

 

そしてずっと、涙を浮かべながら
あんずを撫で続けていました。

 

あの頃、家の中で一番荒れていた息子が、
あんずの傍で静かに手を動かしている姿を見て、
私は胸がいっぱいになりました。

 

あんずは、あの頃も今も、
息子の心の支えだったんだと、
あらためて気づかされました。

 

人間って、言葉だけじゃ救えないことがある。

でも、ただそこにいてくれるだけで、
救われることがある。

 

あんずはそれを、16年間、
その存在で教えてくれていました。

 

 

 

悲しい時も、嬉しい時も、
いつもそっと
家族みんなの傍にいてくれたあんず。

 

あなたがいてくれたから、
あの苦しかった時期を
乗り越えられた気がします。

 

あなたがいてくれたから、

この家に笑顔が戻ってきた気がします。

 

中村天風先生はこう言っています。

 

「感謝する心は、どんな苦境の中にも、

 必ず光を見つけさせてくれる」と。

 

 

あんず、

あなたは私たち家族にとって、

まさにその「光」でした。

 

16年間、本当にありがとう。

 

どうか虹の橋の向こうで、

ゆっくり休んでください。

 

またいつか、必ず会いましょう。

 

 

ナルハラ (借金500万円・息子の非行・
     頸椎の後遺症という三重苦を、
     中村天風先生の教えで乗り越えた

     昭和ど真ん中のじーじ)

 

 

 

 

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◀ 前話:第8話「大学での合気道の練習中の頸椎亜脱臼」はこちら

初の挫折その2〜クシャミひとつで、救急車が来る日々〜

 
 

無事に大学を卒業し、
4畳半一間の下宿から
新築のワンルームマンションへ
引っ越しも済ませました。 

社会人としての
新しい生活のスタートです。 

しかし私の胸の中には、
晴れやかな気持ちと同時に、
ひとつの重い不安が常にありました。

 

いつまた、
あの痛みが来るのか。
首の違和感を抱えたまま、
私の社会人生活は
始まった。

 

頸椎亜脱臼の後遺症として残ったのは、
首への漠然とした
違和感だけではありませんでした。 

それ以上に怖かったのは、
「いつ、どのきっかけで
 動けなくなるか分からない」

という恐怖でした。

 あの経験したことのない激痛は、
今でも私の中で
トラウマとして生き続けています。

 

まず、寝て起きる瞬間が怖い。

 少しでも
寝違えるような姿勢をとってしまうと、
首に悪影響を与えてしまうのではないか
という不安が頭から離れない。

 だから枕は使うのをやめました。

代わりに
バスタオルを何枚か折り重ねて、
自分の首のカーブにぴったり
フィットするように調整してから眠る・・

そんな毎晩の眠りに入る前の儀式が、
社会人になってからの
私の日課となっていました。

 

 

配属は営業職。

新入社員として
少しずつ仕事を覚え始めた、
入社3ヶ月目のことでした。

事務所の棚の上段にあった
段ボール箱を取ろうとした瞬間、
予想外の重さが腕にかかり、
その力が首へと伝わった・・・

「グキっ」。

首の内側から、自分だけに聞こえる
あの、とてもイヤな音。 

あっ、と思った時にはもう遅く、
背中のあたりから
じわじわと這い上がってくるあの痛みが
首まで到達して、
私は動けなくなりました。

救急車こそ呼びませんでしたが、
先輩社員3人に抱えられて
車に乗せられ、近くの病院へ直行。

病院に着いても痛みで動けず、
少しでも体勢が動くと、
私が余りにも痛がるので
看護師さん数人がかりで
ストレッチャーに乗せられ、
救急処置室へ。

レントゲンを撮っても、
ぎっくり腰と同様に
どうすることもできず、
痛み止めの注射と薬で、
また5日間ほどの入院となりました。

入社早々、会社には
申し訳ない思いでいっぱいでした。

私は首に爆弾を抱えていましたが、
会社側から見れば、
私自身が爆弾だったかもしれません。

幸い、業務中の出来事だったので
労災扱いにはなりましたが、
新入社員として
印象が悪くなったことは、
言うまでもありませんでした。

 

 

それが1回目の入院。

そして同じ年の秋、
2回目の悲劇が起きました。

土曜日のことでした。

広島から
友人が遊びに来てくれることになり、
夕方に四条河原町で
待ち合わせをしていました。

マンションで出発の準備を終えて、
あとは顔にクリームを塗るだけ・・・

時間も押してきていたので、
少し急ぎながらクリームを顔に塗った、
その瞬間でした。

指の圧力が強すぎたのか。

「グキっ……」

 来た。ヤバい。

激痛が来る前に、
なんとか部屋の電話の横まで
這い寄って床に寝ころびました。

当時はまだ携帯電話などありません。 

床に寝たまま、
電話機を鏡に映しながら
数字を確かめつつ、
知っている友人宅へ一軒一軒
電話をかけていく。

こういうことが何度かあったおかげで、
そういう準備だけはできていました。

駆けつけてくれた友人が
食料を持ってきてくれて、
本当に助かりました。

その時は激痛ながらも
なんとか起き上がることができたので、
病院に行っても寝るだけだからと、
その時は、自宅でトイレ以外は
ひたすら横になって過ごしました。 

四条河原町で
3時間近く待ち続けた友人には、
本当に申し訳なかったと
今でも思っています。

月曜の朝、また会社に
「首が痛くて動けない」
と連絡を入れました。

半年で2度。

さすがに
会社に居づらくなっていきました。

それでも上司がいい方で、
かばってくださったおかげで、
そのまま仕事を続けることができました。

翌年は細心の注意を払いながら生活し、
症状も出ずに過ごしました。

もう大丈夫かもしれない・・・

そう思い始めた3年目の半ば、
ある朝のことです。

出勤前に洗面所で歯を磨いていると、
くしゃみがこみ上げてきました。 

急いで口をゆすぎ終えた瞬間
「ハクション!」 

そして同時に、
「グキっ……」

くしゃみひとつですよ。

自分で救急車を呼び、
会社に電話を入れました。

5日ほどで退院し、
2日ほど自宅で休んで出勤した日に
退職届を提出しました。

 

 

実はその頃、
同じ会社の同期の女性との
結婚が決まっていました。

退職の2週間前が
結婚式というタイミングの悪さ。

式には会社の同僚や先輩方も
出席してくださいましたが、
披露宴が
どこか盛り上がりきれなかったことを、
今でも覚えています。

その後は、配送、事務、訪問販売etc・・

 「グキっ」
とくるたびに
転職を繰り返す7年間が始まりました。

その間に1人目の子供も生まれ、
本来なら幸せいっぱいのはずでした。

しかし貯金はなく、経済的な不安が常に
家庭の中に漂っていました。 

私以上に、
妻が苦しんでいましたね、
間違いなく・・

いつも心のどこかで思っていました。

あの首の怪我さえなかったら。
あの時、部活に入らなければ。
あの下宿を選ばなければ・・・。

後悔ばかりの毎日の中に、
感謝のかけらもありませんでした。 

この頃の私には、まだ
「心の置きどころ」
という言葉も知らなかったのです。

知っていたとしても、その意味は
伝わっていなかったでしょう、
この頃は・・

 

次話 「バブル崩壊と借金地獄の始まり」はコチラ

昭和ど真ん中のじーじ「ナルハラ」

 

 

 

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