スジグロボタル 西日本亜種 兵庫県北部 2022年06月28日 | 昆虫漂流記

昆虫漂流記

西日本を中心に昆虫を追いかけています。✌
東へ西へ、過去に未来に昆虫求めて漂流していますが、
近年は、昆虫だけにとらわれず、自然全体から、
観察する眼を持ちたいと思いますのでよろしくお願いします。

スジグロボタル

西日本亜種 兵庫県北部

2022年06月28日

和名はスジグロボタル、スジグロベニボタルなどの呼び名があります。
ちなみにスジグロベニボタルと呼ばれはていた頃は分類上ベニボタル科に属していましたが現在は、ホタル科に修正されていますのでスジグロボタルと呼ぶのを推奨します。

国内のスジグロボタルは次の様に亜種に分かれています。

  • Pristolycus sagulatus sagulatus Gorham, 1883 の北海道、本州中部以北に生息する基亜種(原名亜種)
  • Pristolycus sagulatus adachii M. Sato, 1986 の近畿から九州に生息する西日本亜種(近畿亜種とも記載)
  • Pristolycus sagulatus amami の奄美大島に生息する奄美大島亜種

基亜種(原名亜種)は、関東地方の多摩丘陵の谷戸に生息する個体群が人の生活区域から身近な為にネット上にも沢山の写真が紹介されています。

しかし、西日本亜種は情報過多なネット上でも文面での記載は見つかりますが、実物を撮影した写真を見つける事が出来ていません。
現在西日本亜種の生息場所も近畿圏では兵庫県の北部に1箇所、京都 芦生(京都大学芦生研究林で2008年から2016年まで採集記録があります)、山口県や島根県の寒冷な地域の湿地など数少なく限られた場所のようです。
なお、私がこのブログを記載するに参考に記述された論文にも「近畿地方は特に稀な種」と紹介されていますが、中国地方や特に九州の現状は手持ちの資料が少なく情報不足です。

西日本亜種の学名は
Pristolycus sagulatus adachii M. Sato, 1986
学名「adachii」は、発見者の但馬むしの会の足立義弘氏によるもので、「M. Sato」と表記がある部分は名古屋女子大学の佐藤正孝教授と大阪自然史博物館の宮武頼夫先生によります。
近畿亜種とも西日本亜種とも云われる由来は兵庫県で発見された事によります。

(今回紹介している生息地が西日本亜種の基準になっています)

今回はこの珍品な西日本亜種について撮影に出かけました。
今回紹介する生息場所の標高は700メートルに位置する池(沼)です。西日本亜種が発見されたその場所になります。

(左端にある木道から日陰の部分で探します。)

山影や池に張り出した樹木で日陰になっている薄暗く湿った池の周囲の草の上で、見つける事が出来ます。
最初はなかなか見つかりませんでしたが、見つけるコツが判ると次から次へと小さな個体が真っ昼間から、ひっきりなしに動き回っているのを見ける事が出来ます。
大きさは5ミリほどでヒメボタルと同じようなサイズですが光らない蛍です。

基亜種(原名亜種)は鞘翅の赤色部分が大きく美しいです。

(此方は比較する為に関東周辺の個体の写真を添付してみました)

 

西日本亜種については鞘翅が黒色部分が広がり部分的に赤色なのが特徴です。

採集には網をスイ―ピングするだけで捕獲が容易です。
しかし今回の目的は撮影です。
撮影前に想像していたスジクロボタルはもう少し大きいと思っていました。当然レンズもそれなりのサイズを準備してきましたが、実際はさらに小さく、持ち込んだレンズのサイズを間違えた事に悔やみました。
撮影は薄暗い環境でひっきりなしに動き回る5ミリの虫にピントを合わすのは流石に難儀です。
湿地(池)の中にも三脚は立てられず、手持ちで、木道に膝をついて体を乗り出して覗き込んでの無理な姿勢での撮影でしたので、それなりの写真ですが申し訳ありません。
肉眼では鞘翅の模様が明瞭には判らない程でした。

 

日に日に熱くなりますが、

このスジグロホタルは寒冷地を好むホタル故に、この場所も少し涼しい風が通り抜ける良い所でした。

でも熊の生息地域にも含まれていますので熊鈴はモチロン持参です。