イボタガ 野外での幼虫観察と飼育観察 兵庫県小野市 2019年05月29日 | 昆虫漂流記

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東へ西へ、過去に未来に昆虫求めて漂流していますが、
近年は、昆虫だけにとらわれず、自然全体から、
観察する眼を持ちたいと思いますのでよろしくお願いします。

イボタガ

野外での幼虫観察と飼育観察

兵庫県小野市 2019年05月29日

 

春の三大蛾と云えば
オオシモフリスズメ
エゾヨツメ
イボタガ
の3種類になりますが、
これらの蛾を採集しようとすると、
桜咲くまだ肌寒い季節に、
月の灯りが少ない闇夜に
一光の灯りを目当てに
夜な夜な、徘徊する必要があります。


まるで不審者のように、ふらりふらりと灯りを求めて彷徨ってね!

 

春の山道を散策していると、
鳥(フクロウの仲間かな?)に食されたエゾヨツメやイボタガの残り翅が落ちているのは目にしますが、
採集の意志を持って探すとなると見つけるのは難しいのです。

今回はその中のイボタガをとりあげて見ます。

 

成虫の翅色には色彩の派手さは皆無ですが、
極めて複雑な紋様が規則正しく並んでいる美しい翅で、
蛾の翅なれど、模様の繊細さに忘れる事が出来ない姿です。

 

著作権の関係上から、保護期間50年を超えていると思われる

戦前戦後の時代の図鑑(原色千種昆蟲図譜、平山修二郎著、松村松年校閲)

を使用して写真添付しています。


今回は成虫ではなく、それ以上の異様な姿の幼虫を、
運良く、見つける事ができましたので紹介をしたいと思います。

 

さて、最近の野山ではイボタノキの花が満開を過ぎて散り始めています。
ウラゴマダラシジミやミドリシジミの幼虫を探すつもりが忘れていた事に気が付き、
慌てて出かけてきました。

 

ウラゴマダラシジミの蛹と成虫の姿

(蛹は寄生の場合もあります)

 

ミドリシジミの幼虫の巣(赤丸)と成虫の姿

 

結局、ウラゴマダラシジミは蛹に、ミドリシジミの巣はすでに空家(蛹になる為に移動済)になっていました。
その際に偶然に見つけたのがイボタガの幼虫です。

 

現地のイボタノキの花は、ほぼ散り落ち、
花葛は落ちてしまっているので枝葉の懐になる裏面に潜り込むと
直ぐにイボタガの幼虫を見つける事が出来ました。

満開のイボタノキの花

今回は少し時期が遅かったために残っていた花はこれだけ。

 

蛾の幼虫には、多種多様に異様な姿の種類が多いのですが、
この幼虫も非常に異様な姿(前方に4本、後方に2本、後方背中に1本の角)をしているのが特徴です。

 


今はまだ角が7本付いていますが、
次の加齢時には角が無くなるようです。

 

この日はまだ飼育準備が出来ていないので、このまま撮影だけで撤収いたしました。

後日早々に、寄生される心配を考えて

飼育ケース、食草の準備が出来次第に飼育にとりかかろうと考えています。

 

本日最後に

紹介する写真は、こんなに可愛い動物も見かけました。

でも可愛いだけではすませられない害獣なんです。

今の季節は春の繁殖期に育った子供が出没する季節なんですよね。

 

特定外来生物のアライグマ君!

「君が悪い訳じゃないよ!」

「無理やり捕らえられて日本に連れて来た人間が悪いんだよ!」

「手におえなくなったので逃がしてやろう!」

「可哀想だから逃がしてやろう!」

と勝手な解釈で飼育を放棄した人間達が悪いんだよ」

小さな体に、こんなに可愛いい目が怯えた眼差しで訴えていましたよ。

「僕と同じ境遇になってしまう動物を増やさないで、輸入しないで下さい!」と~!

 

追記観察等

(これから先は後日に追記した記事になります)

 

イボタガの幼虫を持ち帰り飼育を始めています。

採集は高さが2メートル程で畳2畳分ほどに広がっているイボタノキで発生しています。

このイボタノキの足元は葉が無ない小枝が無数に拡がり、高い枝は2㍍を越えて飛び出した新枝さえ見られます。

此処のイボタノキの樹木で確認出来た幼虫は8頭です。

この周辺一帯では、大小と幾つものイボタノキが生え、春には鳥に食されたイボタガの翅が落ちている事も見かけているので、イボタガの個体数も濃い地域と考え、後日に8匹全てを持ち帰っています。

 

飼育に使用したイボタノキの枝は、高く飛び出した枝先では今後の蝶や、蛾の写真撮影には不向きと勝手な考え、それらの枝先を優先しながら切り取り持ち帰って飼育に使っています。

なお撮影日は記載しておきますが、8匹の写真がどの個体なのかは不明な為、詳細な月日を追った成長過程の生態は不向きですが、この1月ほどの間に観察している経過です。

 

野外にて 2019-05-29撮影

 

野外にて 2019-05-30撮影

 

野外にて 2019-06-13撮影

 

野外にて 2019-06-13撮影

 

イボタノキの枝先をまとめてテッシュペーパーを巻き、輪ゴムで留めたものを、

パトローネと呼ばれる35フィルムケースに入れて隙間をテッシュペーパーで詰めて固定し、

水を含ませて水槽内(衣装ケース)に転がしておきます。(パトローネでなくても代用が出来る物なら良い)

 

中型の衣装ケースの底には、

湿度を保つ為と掃除を容易にする為にキッチンペーパーをひいて、

イボタノキの準備が出来たものを入れるだけです。

突起を持っている4齢までの幼虫では、このように水槽に土を入れておく必要はありませんが、

5齢に変態すると、いつの間にか幼虫が老熟し橙黄色になるので、5齢に変態した際には土を入れておいた方が無難でしょう。

なお水槽の土は数日前に、

ホームセンターでカブトムシ飼育用で販売されている腐葉土を園芸用のフルイにかけ、

ナイロン袋に入れて電子レンジで加熱消毒(害虫駆除の為)をしてから数日を経過したものです。

 

このように水槽に土を入れておくだけでも幼虫が、自然に土にたどり着き潜りこみますが、

中には老熟(橙黄色)した幼虫がキッチンペーパーの上を徘徊して土にたどり着けない個体も見られます。

其の際は老熟した幼虫を土の上に置いてみると、蛹化場所を探している個体であるなら数時間後に自然に潜り込みます。

其の為には、キッチンペーパーは湿らせた状態にはしておく必要がありますが、

水が溜まり溺れてしまう状態にはしてはいけません。

 

飼育水槽の完成がこの姿です。

イボタノキの枝葉は、霧吹きで湿らせておく方が、

水枯れをしないので長持ちします。

令数を重ねた幼虫が8頭であれば、このぐらいのイボタノ葉は数日間で食してしまいます。

 

カーテン越しの明るい場所で、

ケース内が高温にならない場所でおいておきます。

カーテン越しにしたのはイボタノキの葉が光合成を出来るようにする為です。

くれぐれも高温にならないように。

 

撮影日 2019-06-11

上の個体が5齢に変態した個体、

下の個体が5齢に変態後に数日経過し老熟した個体。

どちらも9センチのサイズに成長しています。

この辺りで成長が止まったようです。

 

撮影日 2019-06-11

老熟してからも数日間はこの様に盛んにイボタノキの葉を盛んに食します。

 

撮影日 2019-06-11

老熟幼虫に変態した際の幼虫は、

長さ9センチ、太さ1.5センチ弱の大きさ

 

(紹介していない老樹幼虫の別個体については

前蛹への準備になるのか?サイズが短くなっている個体もあります)

 

これ以降は上記の添付写真とは別個体です。

数頭の個体を使用しながら、変態の様子を順に紹介していきます。

 

土に潜っていく姿です。横に散在しているのは糞になります。

 

飼育ケース底面に降りると2日も経たずに、

この様に老熟幼虫時期とは違う様子になりました。

外皮表面はまだ艶がある色彩ですが、明らかに大きさと弾力に違いがあります。

前蛹の初期の様子なのでしょうか?

(この個体は上添付写真の土に潜っていった個体とは違い、

キッチンペーパーの上で前蛹に移行しようとした個体です)

 

その後、2日間経過で外観が代わって来ます。

色はこの様に艶が無くなり、大きさは4センチに縮んでいます。

まさしく前蛹と呼ぶ姿に、間違いない姿です。

 


更に1日経過すると蛹化しました。

撮影時刻 午前02時10分

幼虫を覗くと既に蛹に変態していました。

前日の21時では幼虫でしたので、この間に変態しています。

鮮やかな緑色が際立ちます。

 

撮影時刻 午前08時00分 (蛹変態後6時間経過)

蛹の色も暗い色に変わってきました。

 

更に6時間経過すると

真っ黒の蛹に変化しました。

 

この後、1週間が経過した頃に

下添付写真のようにセットしている2つの水槽を取り出して、様子を調べてみました。

衣装ケース内にセットした、2つの水槽の土をひっり返して調べてみると、

1つはマット(腐葉土)が乾燥気味で、もう一つはマットに含まれる水分量が多めになっていました。

乾燥気味はマットを握っても固まらずに崩れてしまう程度の水分量で、

もう片方はカブト虫、クワガタムシの成虫を飼育するぐらいの水分量(マットを握ると塊になるぐらい)です。

蛹になっていたのは、乾燥気味のマットに5匹ですが、水分量が多い方には1匹すら入っていませんでした。

 

結局

イボタガ幼虫を8匹の飼育を始めましたが、

蛹まで成長したのが5匹、

蛹になり直ぐに寄生されている事が判明したのが2匹、

未だ終齢幼虫が1匹という現状です。

 

2019-06-28 撮影

1匹のイボタガ寄生宿主の蛹から出てきた上写真の寄生虫は3匹ですが、

もう1匹のイボタガ寄生宿主から出てきた寄生虫は8匹でした。

(寄生虫は何なのかは判明できていません)

 

2019-06-28 撮影

マットの乾燥程度は、この具合です。

 

このまま夏越し、冬越しの準備に入りますが、

経過観察の次の様子は春までなさそうですね

 

2020-02-15現在、このまま5匹が生存しています。

湿度は高めに維持するために霧吹きを使用しています。

蛹は何時、羽化が始まっても良いようにケースの周りは登って翅が乾かせるようにキッチンペーパーで3方向を覆い

樹も入れてナイロンで半分ほど蓋にして覆っておきます。

 

3月初めより蛹を触ってもピクリと動かなくなりました。

死んでしまったのかと思いましたが、同じようにそのままで湿度を高めに管理していました。

 

2020年4月5日早朝4時に1匹が羽化しているのに気がつきましたが、

少し翅にシワがありましたのでケース内が乾燥するように蓋を外しておきました。

続いて8時ごろに2匹目(写真)が羽化しました。

今度は完品です。

 

此れにて、1年間の飼育状況の報告を終了いたします。