日本的感性 | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/1/18

「そのとき○○は、やがて~となるであろうことを、まだ知らず
 にいた。」
 
NHKの大河ドラマのナレーションなどでおなじみのフレーズ
ですが、これは日本人に特有の時間意識なのだそうです。
 
『日本的感性 触覚とずらしの構造』
        佐々木健一著 中公新書
 
冒頭の文は、「過去を振り返り、その過去を現在の目で捉え
その関係を未来‐現在の位置に投影して、現在を相対化して
いる」のです。
 
過去、現在、未来を自由に行き来してとどまらない日本人の
特異な時間意識は「残り香」「なつかし」という残像に執着
する感性に通じるものがあります。
 
花の観賞を例にとると、西洋的な感性では、バラそのものに
対して距離をとり、明晰判明な像を結んで世界を認識します。

しかし日本的感性においては、桜の花を、その美しい空間の
広がりのなかに入り、その空間に包まれること、皮膚を介して
外なる世界を感ずるという触覚性によって、世界を認識する
のです・・・。
 
おもかげ、なごり、けしき、なつかしさ、たゆたい、そこは
かとなく、なにとなく・・・
 
本書には、私達日本人の感性に訴えかけ、心を揺さぶるもの
の正体が書かれています。

すなわち、店を居心地のいい空間に仕立て上げたり、日本
人の心の、琴線に触れるサービスのあり方に関するヒントが
たくさん隠されていると言えるでしょう。
 
和歌を素材として多用していますので、優雅な趣のある本
ですし、決してビジネス書では味わうことのできない、情緒
への刺激があります。
是非、ご一読を。