出世をしない秘訣 | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/1/19

あらかじめお断りしておきますが、タイトルは間違いではありません。
 
『出世をしない秘訣』
  ジャン=ポール・ラクロワ著 こぶし書房
 
本書の通りに実行すればどうなるでしょうか。

事業家になることもなく、いつまでも二等兵でいることができ、
政治家にも、流行作家にも、社会の寵児にもなることはありません。
もちろん、ミンクの毛皮、自動車、勲章などにも縁のない生涯が
待っています。
 
その代わりに、ロバのようにはなることが出来ます。
ニンジンにつられて行くのを思いとどまり、土手の草花を好き勝手
に道草して食むことができるのです。
親しい友達と長い時間ジョッキをあおったり、とりとめのない言葉
を交わしたり、黙りこくっていたりと御意のままに過ごすこともで
きます。
 
“かくて諸君ご自身は・・・他人様より狡くもなく、かくべつ尊敬に
 値するものでもなく・・・ひととおりのみなさんご同様、肉体上の
 欠陥もあり、奇妙な癖もそなえていて、いずれは消滅する70キロの
 肉塊にすぎず・・・ありふれた人びとのように、いくらか頭が禿げ、
 少しく妬み深く、そこはかとない色気もあり、多少の虚栄心はまぬ
 がれず、そして心ならずも正直であり・・・・・。”
 
既に成功を手にした人は、落伍者の負け惜しみだと優越感に浸りな
がらも、胸にちくりと痛みを感じて、本書を読むことになるでしょう。
 
大成功を勝ち取ろうと野心満々の人は、反面教師として本書を読み、
逆へ逆へと行動していくことでしょう。
 
しかし、これまで、本書に書かれているような“出世をしない秘訣”
を特に意識して行動してきたわけでもないのに、事業家にはなれず、
政治家にも、流行作家にも、社会の寵児にもなることがなかった
大多数の人にとって、本書は【救いの書】となることでしょう。
 
何事にも中途半端で自信がなく、前に進む行動力も、後ろに退く勇気
もなく、悶々としながらも、同じ場所で延々と足踏みを続けている。

どっちつかずの凡庸がもたらす平凡な日常というのは、見る角度を
変え、心持ちを改めてみれば、むしろ真の意味で豊かな、最高の人生
を約束してくれるものなのかもしれません。