二番目の足 | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/10/23

「蟻は左の二番目の足から歩き出す。」

面と線だけで構成された「赤蟻」など蟻を多く描いたことで知
られる画家熊谷守一氏の言葉です。

「地面に頬杖つきながら、蟻の歩き方を幾年もみていてわかった」

とのことですが、その晩年の30年間、豊島区千早町にある自宅
から一歩も出なかった画伯の観察ですから説得力があります。

「カニは、なにしろ左右にハサミをのぞいて四本ずつ八本ある
 ので、どの足から歩き出すのか、いくら見てもわからず閉口
 しました。
 カニの絵がいまだに描けないのはこのためなんです。」

カニの利き足がどの足かは残念ながらわかりませんが、食通に
言わせると、タラバ蟹(実際はヤドカリの仲間)は、下から二番
目の足が一番おいしいそうです。

使用頻度が多く、しっかり身が詰まっているからおいしいのだと
仮定すると、左右いずれにせよ下から二番目の足から歩き出す
のかもしれません。

私は右足から歩き出します。ズボンに足を通す時も右足からです。
腕を組むのも、手を互い違いに組み合わせるのも右が上の方が
しっくりきます。

利き足や利き手にはそれぞれ個性がありますが、歩いていて右
や左に曲がろうとするときには、利き足に関わらず必ず左足を
曲がる方角に向けて舵を切るのだそうです。
左足を外側に踏み出す方が内側に踏み出すよりもスムーズにで
きますから、人は左回りの方が得意なのです。
陸上のトラックが左回りに出来ているのも、そうした理由から
です。

方向を決める足が左足となった理由が神の意思によるものなの
か、それとも生物学的な必然性があってのことなのかはわかり
ません。

しかし、こうしてあらかじめ人間の体にプログラムとして組み
込まれていることは、他にもまだまだあるに違いありません。

つい手が伸びて無駄なものまで買ってしまったり、今日こそは
我慢しようと思っていても、ついふらふらと居酒屋の暖簾をく
ぐってしまう。

わかっちゃいるけどやめられない衝動を引き起こすメカニズム
やツボを発見できれば、繁盛店を作るのは簡単です。

わき目を振らずに顧客の行動だけをじっと観察し続けていれば、
消費者は、いったい何番目の指で財布を開くのか、いつか発見
できるかもしれません。