制動距離 | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2012/10/10

車のブレーキを踏んでから、完全に車が停止するまでに進む距離の
ことを制動距離と言います。

もちろん、スピードが速いほど制動距離は長くなります。
車の制動距離は速度の2乗に比例して大きくなります。
つまり、速度が2倍になれば、制動距離は4倍になります。50km/h走
行時には15mで停止できた場合、100km/hならば制動距離は60mも必
要になります。
そして、人間の目は、速度が上がるほど、制動距離を短く見積もる
傾向にあるようです。

総務省が5年に1回調査する「住宅・土地統計調査」によれば、2008
年の日本全国の空き家数は757万戸、空き家率は13.1%に達していま
す。
これらの数字は1948年以来、一貫して増え続けています。

単純に言えば、総住宅数から総世帯数を引いたものが空き家です。

人口の伸びが鈍化してきた中でも、世帯数は順調に伸びてきました。
平均世帯人数が減れば、総世帯数は増えます。つまり人口が減少し
たとしても、世帯数=住宅数の需要が増えることもありえます。

核家族化によって大家族が世代ごとに分かれて住むようになったこ
とで、人口増以上に世帯数が増え、住宅需要を底支えしてきました。
しかし、核家族化の進行が話題になったのはもう30年も前のこと。
今では、大家族の生活をドキュメントしただけの番組が視聴率を稼
ぐほど、貴重な存在になっています。

現在、日本の平均世帯人数は2.58人です。
757万戸が全部使えたとすると約2,000万人分の住宅が余っている計
算になります。

“ウサギ小屋”に例えられるように、日本人の住宅事情は劣悪でし
た。
多くの人にとって、マイホームを取得することが人生の主要な目的
であり続けてきました。
国も1972年の「住宅取得控除」から現在の「住宅ローン減税」に至
るまで一貫して持家政策を推し進めています。

『空き家急増の真実』(米山秀隆著 日本経済新聞出版社)による
と、各種統計から、今後、空き家問題はさらに深刻化するだろうと
ことです。

10/1付の日経MJ「底流を読む」では、千代田区丸の内界隈の小売業
の売上高は、1982年時点では180億円程度にすぎなかったものが、
現在では2,000億円程度になっていると指摘しています。

コンパクトシティに誘導するまでもなく、時代に敏感な企業は、人
が集まったり移動する際のツボとなる地域に殺到し、商業地域の選
択と集中は、すでに進行しつつあります。

変化対応が不得手で図体が大きい行政組織が、今後どこかで、これ
まで加速してきた持家政策に急ブレーキをかけたとしても、空き家
利用へと方向転換するまでの制動距離は、かなり長くなってしまう
ことでしょう。

増え続ける空き家対策が後手に回り、全国に空き家が大量に発生す
れば、コンパクトシティ構想からはみ出した地域にも、安価な空き
家を求めて移住者がなだれ込むかもしれません。
現在、だれも見向きもしない地域に、有望な商業立地の可能性が開
けるかもしれないのです。