トルコ蜜飴 | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/8/26

米原万理さんのエッセー『旅行者の朝食』(文藝春秋)の中に、「トルコ

蜜飴の版図」と題した文章があります。
 
彼女が、小学校3年の秋に両親の仕事の都合でプラハに移り住んだ
時、学友達と駄菓子屋に寄って買うお菓子の人気ナンバーワンは、
「トルコ蜜飴」でした。

「トルコ蜜飴」はヌガーをもう少しサクサクさせて、ナッツ類の割合を

多くした感じ。並のキャンディーやチョコレートじゃ太刀打ちできない

ぐらい美味しいのだそうです。

ある日、ロシア人の友人に、「トルコ蜜飴」より100倍おいしいという

【ハルヴァ】というお菓子を、たった一口だけもらいます。
 
“「どう、美味しい?」
 美味しいなんてもんじゃない。こんなうまいお菓子、生まれて
 初めてだ。

 たしかにトルコ蜜飴の100倍美味しいが、作り方は同じみたいな

 気がする。初めてなのに、たまらなく懐かしい。
 噛み砕くほどにいろいろなナッツや蜜や神秘的な香辛料の味が
 わき出てきて混じり合う。

 こういうのを国際的に通用する美味しさというのか、15ヵ国ほどの

 国々からやって来た同級生たちによって、青い缶は一瞬にして

 空っぽにされた。”
 
以降、米原さんの【ハルヴァ】を求めてのエピソードが続きますが、

結局、最初に食べた最高の【ハルヴァ】にめぐり合うことは出来ません

でした。

その代わりに『料理芸術大辞典』(V・V・ポフリョープキン著)の中に

【ハルヴァ】について詳述された文章を見つけます。
 
“ハルヴァの成分は、砂糖と蜂蜜、サボンソウの茎根、油分のあ
 る味の濃い食材(アーモンドなどのナッツ類かひまわりや胡麻
 の種)それに穀物の粉がつなぎの役割を果たし、さらに多数の
 香料が加えられる。

 この何の変哲もない材料がハルヴァに変貌するためには、材料
 の全てが泡状にならなくてはならない。
 そのためにこそさまざまな技術が動員され、その多くが今もカン

 ダラッチ(ハルヴァ職人)一人ひとりの企業秘密になっているのだ。

 それが、近代工業的方法ではどうしても実現できないのである・・・。”
 
熟練のカンダラッチの手による冷めたハルヴァは、空気のように軽くて

抵抗のない絶品となるそうです。
というのも、ナッツ類のデリケートなスフレと混ざり合った微細この上

ない砂糖の結晶が口の中でさくさくしたかと思うと、たちまちとろけて

しまうからです。
 
一流カンダラッチによる【ハルヴァ専門店】を、どなたか仕掛けてみま

せんか?
ブレイク間違いなし・・・かも?