2012/6/20
名前の由来は「目見えず」→「メメズ」→「ミミズ」。
目がなく、手足もありません。普段は土壌中に生息していますが、
雨の朝などは地面をにょろにょろと這っていることもあります。
見た目はグロテスクだけれども、ミミズは土を食べ、そこに含まれる
有機物や微生物、小動物を消化吸収した上で粒状の糞として排泄
することで、土壌改良に貢献しています。
また、昆虫やモグラなどの小動物から鳥などの中型種、更にはイノシシのような大型のものまで、多くの動物の重要な食物として大きな
役割を果たしているミミズは、食物連鎖の最下位を支えています。
『教授とミミズのエコ生活 ~または私は如何にして心配するの
を止めてミミズを愛するようになったか』
三浦俊彦著 三五館
大学教授である著者がミミズコンポストを始めたことによって起こったさまざまな出来事の記録です。
ミミズコンポストとは家庭用の生ごみをミミズが処理して上質な肥料にすることをいいます。
ミミズは、24時間で自分の体重の半分から同等以上の重さの生ゴミを処理します。つまり1キロのミミズがいれば、一日に500グラムから1キロ以上の生ゴミが処理できるのです。
著者はキャノワームという容器とミミズを購入して、ミミズコンポストを始めます。
生ゴミを減らせるうえに、維持費はゼロ。
まさにエコ時代の申し子というべきミミズコンポストですが、つつがなく運用するのはかなり難しかったのです。
次々に繁殖し、生命力の塊のように見えるミミズが、実は非常にデリケートな生物だといううことがわかってきます。
ちょっとした環境の変化によって数日前まで元気にうごめいていたミミズが姿を消し、絶滅してしまうという経験を何度も繰り返してしまうのです。
“生物は自然界のバグ。
生物個体の誕生や生存、繁殖はまったくの偶然の成り行きに任され
ていて、何の目的も意義もない。
生物の歴史には、地球上の六割以上の種を絶滅させた「ビッグ・ファ
イブ(五大絶滅)」をはじめ、地球温暖化なんぞお笑い種の環境大破
壊、理不尽な大絶滅は十回や二十回の騒ぎではなく、九十五%以上
の種を一掃したペルム紀末大絶滅なんてのも含ま れている(ちなみ
にミミズはそれを生き延びた!)。
生物は、生き続けるべき義務も目的も持たない、ほとほと盲目的な
物理現象の中に間違いのように明滅した【揺らぎ】にすぎないのだ。
ほんとに。
ミミズ飼育はそのことを痛感させてくれる。
キャノワームにしろミミポットにしろ、生態系のはかなさ、行き当たり
ばったり性、無目的性をこれでもかというくらい見せ つけてくれた。
地球の裏側で蝶が羽ばたきしたがゆえに一週間後に株が大暴落
する、とかいう決まり文句で売り出した科学用語「カオス系」の気まぐ
れさ、おそろしさを何度も実演してくれたのだ。”
さすが哲学者でもある著者の面目躍如です。
所詮、偶然の【揺らぎ】にすぎない存在であるならば、はかない運命を悲観的に生きるよりは、奇跡を信じる楽観主義者として過ごした方が幸せなのかもしれません。