「母なる証明」 | 店舗探し.comの過去コラム

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2009/11/24

ここまで悲惨で、救いようがない映画は久々に見ました。

「母なる証明」。

国際的に評価の高い名匠ポン・ジュノ監督の演出は執拗で、
“韓国の母”と称される国民的人気女優キム・ヘジャの演技は
鬼気迫ります。
二人のコラボレーションによってつむぎだされるシーンはどれも圧巻
で、ひたすら重い映画となっています。

見終わった後には、すべての観客が、重いしこりのようなものを内に
抱えこんで、映画館を後にしたことでしょう。

通常は、エンターテインメントとしての映画の役割は、日常に疲れた
人々の魂の癒しにあるのですから、重いテーマを扱った作品でも、
どこか収まりがよく、カタルシスが予定調和的に用意されているもの
です。

しかし、「母なる証明」には、予定調和は全く無縁で、観客の癒し
など一顧だにしてくれません。

人間の、いわば秘すべき内臓のごときものを無造作につかみ出し、
あるがままに観客の前にさらけ出す一方なのです。
まさに残酷極まりない物語といえましょう。

しかし、内省すれば、誰しも、決して人には言えぬ後悔に満ちた
過去の一つやふたつを持ち、収まりをつけることもなく取り留めなく
引きずっていかなければならないのが「生きる」ということだとしたら、
この映画は私達の人生の本質そのものともいえます。

事業を発想し、作り上げた企画書が描く成功イメージは、どこか
予定調和的なものです。

しかし、事業がいったん動き出したら、想定外の現実が次々に
しがらみ、対応を迫ってくるようになります。
否応なくそんな現実に応接を重ねているうちに、いつしか企画書が
想定していた予定調和は、リアリティを失っているかもしれません。

それでも事業を、怯むことなく進めていくためには、たとえどんな
絶望的な局面を迎えても、目の前の事実や展開する現実を、
あるがままに直視し、立ちふさがる厄介とがむしゃらに戦って、
凌ぎ切るしかないのです。

情け容赦の無い試練や困難が次々と襲い掛かる厳しい経済状況
の中、「母なる証明」でキム・ヘジャが演じ切った母親のように、強く
逞しくしたたかに、修羅を生き抜いていきましょう!